浜田宏一「人口構成がデフレの要因だという日銀の愚かな責任逃れ」

『アメリカは日本経済の復活を知っている』より第3回

 経済学の現状から見ると、ノーベル経済学賞候補としてよく名の挙がる清滝信宏プリンストン大教授の共同研究が示唆するのは、リーマン・ショック以後、英米の大胆な金融拡大があったからこそ、世界大不況のような破局から人々が救われた公算が大きいということに他ならないということだ。

 マクロ経済学の分野において「低金利は企業を脆弱にする」という議論は、実質金利と名目金利を無視している。シカゴ大学では一年目に厳しく注意される誤りだ。それだけでなく、か弱い企業はみな淘汰し、失業もものともしないという、大恐慌時代の井上準之助蔵相の「清算主義」を思わせる。

「良い日銀」と「悪い日銀」

 バレンタインデーの政策変更で、いったんは正統的な政策に戻ったように見えた日銀だが、それはいやいや行ったのではないかという不安もあった。「バレンタインデー緩和」は、私にとっては「良い日銀」であったが、総裁の談話などを聞いて、「悪い日銀」がまだ隠れているのではないかとも思えたのだ。

 案の定、何ヵ月か経つと、私が「良い日銀」の看板にだまされていたことが分かってきた。「バレンタインデー緩和」が有効だったのは、それがうまく期待に働きかけたからに他ならない。しかし、期待効果が有効に働くのは、期待がもっともらしい、信頼できるものでなくてはならない。

 総裁談話や講演の内容は、「金融緩和を外国もやっているし、国内の批判も激しいので、仕方なく宣言していますが、実はデフレ脱却には効かないのです」といわんばかりのもの。そして実際、バレンタインデーのあと約半年の間、日銀政策審議委員会は、買い入れ資産の五兆円増額を除いては、なんら金融緩和の具体的、あるいは数量的な後押しをしなかった(図表1参照)。

 
―連続インタビュー・浜田宏一×安倍晋三―
「官邸で感じた日銀、財務省への疑問。経済成長なしに財政再建などありえない」
 ■貨幣について国家としての戦略的な思考が必要だ
 ■経済金融の世界における外交的戦い
 ■政策の不備、無知がデフレ、円高を呼んできた
―安倍晋三インタビュー・解題― 
「いかにすぐれた政策も、実現するためにはリーダーシップを持つ政治家が肝要だ」
---------------------------------------------------------
ほかにもリチャードブランソン、ハワードシュルツ、クルーグマン、長谷川幸洋、田原総一朗、佐々木俊尚など「豪華執筆陣」の書き下ろし記事がすべて読める
※お申込月は無料でお試し読みができます
月額:980円(税込) 毎週火・水・金曜日配信