『学び続ける力』刊行記念インタビュー「学ぶことは生きること」

池上彰さんの解説はなぜわかりやすいのか
池上 彰 プロフィール

――レジュメをつくってから原稿をつくりなおす。ひと手間かけることでわかりやすくなるんですね。この方法は、プレゼンテーションにも応用できそうですね。

池上 講義ノートも、シンプルなほうだと思います。レジュメのひとつの項目について、3,4行、基本的に年号などの数字や固有名詞だけをメモしたものです。固有名詞の並びを見れば、「ああこういう話の流れだったな」と思い出しやすいんですよね。

ただ、話の流れはほぼ頭に入っているから、ノートは、ときどき数字をあげたり、名前を板書したりするときに、確認のために見る程度という感じでしょうか。

講義ノートは、文章のかたちでは書きません。というのは、文章だと、それをそのまま読むことになってしまうからです。いきいきした講義にするにはかえって邪魔になってしまいます。

テレビで講義と同じテーマを扱った場合でも、このような手順は省略しないで、必ずはじめからやります。テレビの解説は、小学生にもわかるように考えるのですが、講義では東工大生にわかればいいのですから、説明の仕方も違うからです。

それから、世代については意識します。20歳前後の人たちに、20年前の話をしてもわからないし、知識としては理解できても、ピンとこないこともたくさんあるわけです。現代の出来事でも、せいぜい4,5年前のことまでしかリアルには記憶していないでしょう。

でもね、ピンとこない出来事でも、できるだけ、その時代の雰囲気を想像してもらえるような講義にしたいと思って、現代に引き寄せる工夫をしながらやっています。

講義は、毎回ワンテーマ完結のスタイルです。現代史でも、「現代を理解するためにその背景や歴史を理解する」という意図で、テーマを選びます。たとえば、日中関係、日韓関係がおかしくなったと言われているから、日中関係、日韓関係の歴史を振り返ってみようというようにです。

「学び続ける」は人生のテーマ

――タイトルの「学び続ける」という言葉は、池上さんらしいですね。

池上 「学び続ける」ということばは、本を書き始めたころから、自然に頭に浮かんでいました。自分にしっくりきて自然になじむことばです。

ほんとうは「学び続ける」というタイトルでいきたかったのを、編集者に「力」をつけられてしまいましたが(笑)。

自分は勉強が好きでコツコツやってきたから、読者の方々にも同じように、学ぶことの楽しさを知ってもらいたいな、という思いをこめて書いたつもりです。

付け加えると、学び続けることによって自分が変わっていく、ということが、同時に大事だと思うんですね。

企業について、よく、「社会や時代が変わる中で生き残っていくためには、変わり続けなければいけない」と言われますよね。

変わり続けなければ生き残れないというのは、人間も同じです。でも、変わるためには自分の軸が必要です。そうでないと、変わるというよりは振り回されてしまうからです。

そういうふうに考えると、「学び続ける」ことは、人生を豊かにすると同時に、これからの時代を生きるために必要なことかもしれませんね。

(おわり)

◎現代新書 1月の新刊◎ 

『世界史の中のパレスチナ問題』臼杵陽

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