『学び続ける力』刊行記念インタビュー「学ぶことは生きること」

池上彰さんの解説はなぜわかりやすいのか
池上 彰 プロフィール

趣味は本屋通い

――池上さんはよく、本が何冊も入った書店の紙袋を提げていらっしゃいますよね。

池上 本を買うことが好きなのは、大学生のころからですね。

学生時代、バイトはしていたものの、それで好きなだけ本が買えるわけではありません。ある日、神保町の路地を入ったパチンコ屋の景品に、当時新潮社から出ていた『マルクス・エンゲルス選集』を見つけて、「玉が出ればあの本がもらえる」と頑張ったんだけど、全然出なくてすってばかりで……、あれなら買ったほうがよかった(笑)。

NHKに入ってからは、本代を好きなだけ使うようになって、初任地の松江でも、その後赴任した呉でも、毎日本屋に行っていました。松江では今井書店、呉では、支局の近くの繁華街にあった2階建ての本屋でした。店の人とも顔見知りになって、「新刊入りましたよ」と声をかけてもらったものです。自分でもどこの棚に何の本があるのか、並び順まで全部頭に入っているから、その日にどの本が新しく入ったかもすぐわかった(笑)。

いまと物価は違うけれども、あの頃でも本代には万単位で使っていたと思います。

私は酒が飲めないし、煙草も吸わないんです。だから、その分を本代に……と自分に言い訳しながら、でも、普通の人の酒代・たばこ代以上に使ってましたね。

買い物が趣味という人がいますが、私もそれに近いかもしれませんね。いまでも、本屋に行って本を買うことが趣味なのかな。昔も今も、本屋の中を一周まわって買う本がないと、なんだか物足りない。一度に、何冊も、しばしば10冊ぐらい買ってしまうんですが、本のたくさん入った袋を提げて店を出るときは、なんだか幸せなんですよね。

池上流講義のしかた

――この本では、「学ぶ」こと以外に、「教える」ことについても触れられています。具体的には、東京工業大学でどんなふうに現代史を教えているか、その工夫や苦心についても詳しく書かれていますよね。

池上 いまの後期の講義は毎週金曜日に2コマですが、だいたいいつも、水・木曜日に数時間ずつかけて準備しています。この準備は、どんなに忙しくても、必ずします。

まず、ひとコマは1時間半なのですが、この長さでの話の筋立てをつくります。

その筋立てからキーワードだけ抜き書きしたものが、講義で配るレジュメになります。

私のレジュメは、A4用紙1枚に、キーワードを、6、7個、並べたものです。キーワードは長くても20字におさめます。だからすごくシンプルです。

そのレジュメを完成させたら、今度はまた、「さあ、このレジュメをもとにどういうふうに話そうか、どういうエピソードを入れようか」ともう一度考えていくわけです。