『学び続ける力』刊行記念インタビュー「学ぶことは生きること」

池上彰さんの解説はなぜわかりやすいのか
池上 彰 プロフィール

初めて語った父の話

池上 独学が性分というのは、もしかして、父親譲りかもしれません。

本にも書いたのですが、私の父は、ノンキャリアの銀行員で、毎日仕事が終わったあとコツコツ英語を勉強して、通訳ガイドの資格をとり、定年後に、世界各国からの観光客を案内するガイドの仕事を始めた、そんな人です。英語の勉強といっても、英会話学校に行くのではなくて、NHKのラジオ英会話を聞いていました。家には、英会話のテキストが何年分もずっととってあったのを、いまでも覚えています。

父は、日曜にはいつも本を広げて勉強していたし、会話も多かったわけではありません。でも、知らないうちに、影響を受けていたのかもしれません。おれは父と似ているのかな……この本を書いて気がついたことです。

私はプライベートの話は苦手なんです。これまで父の話はしたことがなかったのですが、「自分にとって学ぶということは何なのかな?」と考えながら書いているうちに、ふと思い出して、自然に父を語ることができた気がします。

――本には、池上さんが社会部の記者時代、記者会見場や夜回りの路上で、少しでも時間があれば勉強していたというエピソードが出てきます。当時、現場ではちょっと変わり者と思われていたのでは……とも感じたりしたのですが(笑)。

池上 相当変な奴ですよね(笑)。でも、何と思われているかは、あまり気になりませんでした。

経済を勉強しても、毎日夜回りしている警視庁担当の仕事には、直接役に立ちませんし、だからといって「いずれは経済部記者になりたい」という気持ちもありませんでした。

英語も、仕事で使うわけではないけど、ラジオの英会話を聞いたり、当時はカセットテープの時代でしたが、アルクのヒアリングマラソンを聞いたりしていました。

でもね。「こんなこと勉強して何になるんだろう?」と思ったことは一度もなかったです。

「経済はいまどうなっているんだろう?」と本を読んでいるだけで、知的好奇心を刺激される感じがして楽しかったんです。とにかく興味があっておもしろいから、という理由で、本を買っては読んでいました。