AI(人工知能)は人を感動させる芸術作品を創作できるか?

 コンピュータがチェスや将棋やクイズ番組で人間のチャンピオンに勝利を収め、スマートフォンやテレビが人間と会話を交わし、自動車がドライバー(人間)の手を煩わすことなく自律的に市街地を走る。最近のAI(人工知能)の急激な発達に伴い、既にこれらは実現されており、その幾つかは商品化されてもいる。

 では、もっとクリエイティブ(創造的)、あるいは芸術的な領域ではどうだろう? たとえばコンピュータに小説や詩を書かせたり、音楽を作曲させたりする試みはかなり以前からあるが、最近ではコンピュータに冗談を言わせたり、本格的なクラシック音楽を作曲させて、それを人間が演奏し、CD化して発売するところまで行っている。

 これらをどのように実現しているのか? ニューヨーク・タイムズに掲載された記事によれば、コンピュータに冗談を言わせる「Standup」という研究プロジェクトは、たとえば駄洒落のように、発音や綴りが似ているが意味が全く異なる単語を組み合わせるといった程度の(比較的低レベルの)テクニックを採用しているようだ。

 もちろん駄洒落でも面白いものはあるが、少なくとも現時点でコンピュータの作った駄洒落は、一般の人間が聞いて笑えるレベルには到達していないという。では何故、こんなことをやっているかというと、言語面での障害を抱えている子供達のトレーニング用に開発されたのだという。

 また将来的には、現在のSiriのようにIT機器と人間が話す機会がどんどん増えて来ることが予想される。そこではコミュニケーションを円滑にする上で、どうしてもIT機器にもユーモアを育む必要がある。その準備として、こうした研究を始めたのだという。

コンピュータが作曲した音楽への評価は?

 一方、コンピュータに音楽を作曲させる方(スペインの研究チームが開発した「Iamus」と呼ばれるプログラム)は、「進化的プログラミング」、あるいは「遺伝的アルゴリズム」などと呼ばれる、かなり高度なAI技術を使っている。

 このやり方では、最初に人間がある種の「デジタル化された素材」---それはたとえば短い楽譜のようなものでもいいし、逆に音楽とは全く無関係の数値データでもいい---をコンピュータに入力すると、「突然変異」や「自然淘汰」のような生物進化を参考にして作られたアルゴリズムによって、その素材が音楽作品に進化する。

 こちらの方は聞く人によっては、「良い」という人もいれば「悪い」という人もいるようだ。特にIamusの作曲する音楽は、「現代クラシック」と呼ばれる前衛的なジャンルに属する。この種の音楽では、そもそも人間が作曲した作品でも評価が分かれることが多い。この点はIamus、つまりコンピュータにとって有利に働いたはずだ。ただしアマゾンから発売されたIamusのCDの売れ行きはサッパリのようだ。

 なぜ敢えてコンピュータに音楽を作曲させるのか? その動機ははっきりしないが、ただ一つ、コンピュータが間違いなく人間の作曲家に勝っている点は、その生産性である。Iamusは僅か8分で、1曲の作品を書き上げるという

 ジョージ・オーウエルの有名なSF「1984」では、「プロレ(プロレタリアートの略)」と呼ばれる労働者階級がコンピュータの書いた小説を楽しんでいる。要するに近未来の一般庶民は、コンピュータが大量生産する芸術作品で我慢することになる、という悪い冗談だが、まさか今、コンピュータに音楽を作曲させている研究者たちは、そんなことを考えてはいないだろう。その動機は恐らく「面白いから」とか「話題作り」とか、その辺りに落ち着くのではなかろうか。

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