「ものすごく大きく、そして小さい」宇宙という世界の不思議!

「宇宙になぜ我々が存在するのか」中編
村山 斉 プロフィール

 暗黒エネルギーは、この宇宙の将来と大きく関わっています。今、宇宙はどんどん膨張していますが、少し前までは膨張する速度はだんだん遅くなっていると思われていました。

 ところが、膨張速度をよく調べていくと、不思議なことにだんだんと速くなっていることがわかってきたのです。この宇宙の膨張を速くしている原因が暗黒エネルギーではないかと考えられているのです。

宇宙はニュートリノであふれている

 このように、宇宙の構成要素から見ると、ニュートリノは全エネルギーの〇・一~一・五パーセントほどしかなく、宇宙全体にあまり関与していないように感じてしまいます。ですが、別の見方をしてみたらどうでしょう。先ほどお見せした宇宙の構成要素は、エネルギーを見ていましたが、今度は粒子の数を比べていきます。

図1-3 粒子の数 宇宙に広がる粒子の数を比べると、光子とニュートリノが圧倒的に多い。

 エネルギーでは宇宙全体の約四分の一を占めていた暗黒物質ですが、粒子の数を見てみると、一立方センチメートルあたり一〇〇〇万分の一個くらいと考えられています。ところが、ニュートリノは一立方センチメートルあたり三〇〇個もあるのです(図1-3)。

 物質をつくる粒子の数でカウントしてみると、この宇宙ではニュートリノが一番たくさんあります。

 私たちの体をつくっている陽子、中性子、電子などはニュートリノの一〇億分の一しかありません。実は、この宇宙はニュートリノにあふれていたのです。

 一立方センチメートルあたり三〇〇個もあるということは、この宇宙のどこに行ってもニュートリノがあるということを意味しています。それにニュートリノは太陽などの星からたくさん出ていて、一秒間に数百兆個のニュートリノが私たちの体を通過していることになります。

 そんなに膨大な数のニュートリノが通過しているにもかかわらず、私たちはニュートリノに気づくことがありませんし、見たこともなければ触ったこともありません。それはいったいどうしてなのでしょう。

 実は、ニュートリノはとても恥ずかしがり屋だったのです。私たちが、ある場所に粒子が存在していることを知るためには、粒子が力に反応する必要があります。陽子や中性子は重力に反応するので、他の粒子とぶつかると存在に気づきますが、ニュートリノは重力や電磁気力とは反応しないので、私たちの体をすりぬけて通り過ぎてしまいます。ですから、私たちは、自分の体を通りぬけているニュートリノのことを気にすることなく、生活しています。