もし「反物質」でできたアイスクリームがあったら? 宇宙と私の謎

「宇宙になぜ我々が存在するのか」前編
村山 斉 プロフィール

 〇・二五グラムなんて、たいしたことはないではないかと思う人もいると思いますが、〇・二五グラムの反物質が、同じ量の物質と出合うと、広島の原爆と同じという、とても大きなエネルギーが発生します。

 私たちは身のまわりに反物質が存在しないおかげで、こうして平和に暮らしていられるわけですが、もし、まわりに反物質があったらたいへんなことになってしまいます。

 ただ、〇・二五グラムの反物質をつくるのに必要な金額を調べてみると、一兆円の一〇〇億倍という、これもまたとんでもない金額が必要になってしまうので、大学や企業などでつくることはほとんど不可能です。『天使と悪魔』では、これだけのお金を使っても所長が気づかないという設定でしたので、ものすごくたくさんの予算のある、とてもうらやましい研究所だと思います(笑)。

物質は反物質より多く存在した!?

 ふだんの生活の中では、私たちが反物質に出合うことはまずありませんが、宇宙ではどうでしょう。

 実は、この広い宇宙空間を調べてみても、反物質はほとんど見当たらないのです。ですが、時間をどんどん巻き戻して、宇宙が誕生した直後まで戻してみると、反物質がたくさんあることがわかっています。

 宇宙誕生直後にビッグバンが起きて、たくさんのエネルギーが熱や光という形で放出されました。なので、私たちの宇宙はたくさんのお金を使わなくとも、反物質をたくさんつくることができました。反物質がつくられると同時に、物質もつくられますから、当然、物質もたくさんありました。

 初期の宇宙は、今よりもはるかに小さい空間の中で物質と反物質が混然一体となって、誕生と消滅を繰り返していたと考えられています。

 その後、宇宙はどんどん広がっていき、温度もだんだんと下がり、宇宙全体が冷やされていきます。その頃には、物質と反物質が出合う頻度は減ってきますが、出合うとエネルギーとなっていきます。一方で、新しい物質と反物質を生みだすエネルギーの密度が減っていくことで、物質・反物質のペアが生まれる頻度も少なくなっていきます。そのような過程を経て、宇宙初期に誕生した物質と反物質はほとんどなくなってしまったのです。

 実際、今の宇宙には反物質はほとんど見当たりません。ですが、物質はしっかりと残っています。星や銀河は宇宙の中で美しく輝いていますし、地球や月も存在します。地球の上には物質でできた私たちもいます。これはいったいどういうことでしょうか。

 実は、よくよく調べてみると、物質は反物質よりも数が多かったのです。計算してみると、一〇億分の二ぐらい物質の方が反物質よりも多くあったので、反物質が全部なくなっても、物質が残ることができたと考えられています。

 とはいうものの、物質と反物質はどんなときもペアで生成していたので、物質と反物質はきっちり同じ数だけ誕生していたはずです。

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