もし「反物質」でできたアイスクリームがあったら? 宇宙と私の謎

「宇宙になぜ我々が存在するのか」前編
村山 斉 プロフィール

 物質と反物質の関係は、自分自身と鏡に映った自分の像の関係とよく似ています。鏡で映した世界のように、ある要素が反対になることを対称性といいますが、反物質の場合は、像が左右反対になるのではなく、電気的性質が対称になります。

 私たちがこの世界で目にするものはすべて物質でできています。アイスクリームもそうです。

 もし、反物質でできたアイスクリームがあったとしても、私たちは見た目で区別することはできません。反物質の光に対する特性は、物質とまったく変わらないからです。しかも、重さも同じなので、なかなか区別がつきません。

 ですが、その反物質のアイスクリームを手でもとうとすると、たいへんなことになってしまいます。私たちの体は物質でできているので、反物質でできているアイスクリームに触れてしまうと、そこで大きな対消滅が起きてしまいます。対消滅によって、手がなくなってしまいます。このような話をすると、ゾッとしてしまう人もいるかもしれませんが、対消滅が起きたときに、なくなるのが手だけだったらまだいい方かもしれません。

 皆さんは、アインシュタインが相対性理論から導いた有名な式をご存じでしょうか。E=mc2で表される式です。この式は、重さとエネルギーは同じもので、この二つは互いに変換できることを示しています。先ほど、物質と反物質がぶつかると対消滅して、エネルギーに変わるといいましたが、それはこのアインシュタインの式から導かれることなのです。

 この式の中でEはエネルギー、mは質量、つまり重さを表しています。そして、cは光の速度を表します。つまり、エネルギーと重さは交換することができるといっているわけです。しかも、質量にc(秒速約三億メートル)の二乗がかかりますので、ほんの小さな質量でも、それがすべてエネルギーに変わると莫大な量になることがわかるでしょう。

 物質の質量がすべてエネルギーに変わってしまったら、つまり、エネルギー効率が一〇〇パーセントだったとしたら、エンジンの中でガソリンを爆発させたときのエネルギーの約三億倍のエネルギーを生みだすことができます。つまり、同じ重さで比較すると、反物質と物質がぶつかると、ガソリンの三億倍のエネルギーが生まれるのです。

 この話だけを聞くと、反物質は夢のようなエネルギー源のように思えます。なので、反物質は、SFなどにたびたび登場します。アメリカのテレビドラマ『スタートレック』では、反物質はエンタープライズ号の燃料として宇宙船を飛ばしていますし、小説『天使と悪魔』では、一人の科学者が研究所の所長に気づかれずに、反物質を〇・二五グラムつくったというところから話がはじまっています。

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