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奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第10回】
バレンタインデーの恥ずかしい勘違い

奥村 隆 プロフィール

「授業で一切発言するな」と命じられて

 次の日、僕が登校すると、先生がさっそく話しかけてきた。

 「昨日の父母会でお母さんには言っておいたけど、君は授業中に手を挙げすぎるんだ。これからはあんまり上げず、他の人たちにも発言させなさい」

 僕は答えた。

 「うん。お母さんに言われたから、先生が問題を出すときの2回に1回しか手を挙げないことにした」

 「よし、約束だ。破るなよ」

 先生はそう応じて、満足そうにうなずいた。

 しかし、その後も、同級生の母親たちからのクレームは収まらなかったという。なぜなら、やはり「2回に1回しか手を挙げない」というルールを厳密に守るのは難しく、僕は気分が乗ってくるとどうしても約束を忘れ、何問か続けて「ハイ!」「ハイ!」とやってしまうのだった。その結果、クラスでは、答えの大半を僕が言うという従来通りの事態が続くことになった。

 業を煮やした先生は、「奥村は授業中、絶対に手を挙げてはいけない」と厳命した。僕はそれに従ったが、指された児童が間違ったことを答えると、「違う、正解は○○だよ」という具合に、脇から大声で訂正するようになった。ほとんど野次を飛ばしているようなものだ。

 先生はさらに怒り、「奥村は授業を聞かなくていい。発言もしてはいけない」と命じた。僕も、先生の言いつけに従わなければならないというのは理屈ではわかるのだが、いざ問題が出て、答えがわかると、席に座ったままでも反射的に叫んでしまう。

 最後は先生が、「奥村は、授業では一切黙っていろ。静かにして、他の同級生の邪魔をしなければ、授業中に漫画を読んでいようが、廊下で遊んでいようが、何をしていても構わない」と言い出すという、何だかとんでもないことになってしまった。