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奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第10回】
バレンタインデーの恥ずかしい勘違い

奥村 隆 プロフィール

 相手は「できねえ理由なんて知らねえよ。別にお前に教えてもらいたくねえよ」と答え、後はふくれっ面をして黙ってしまった。今にして思うと、子供ながらに彼は屈辱を感じていたのだと思う。

 しかし僕は、そんなことにはお構いなしに、以後、悪い点数を取った同級生たちにその理由を尋ねて回り、「教えてあげるよ」を連発した。彼らの大半は、嫌な顔をするか、断るか、僕を無視するかのいずれかの反応を示した。

 これら一連の行動は、僕が教室で一部の同級生から「嫌われ者」になる理由として十分だった。しかし、困ったことに、このときの僕の言動の背後には悪意も嫌みもなく、ただ、「相手がうまく行っていない理由を聞いて、うまく行く手伝いをしてあげたい」という好意しか存在しない。

 だから、まさか相手に嫌われているとはまったく思わなかった。その結果、僕は日々同じような行動を繰り返し、クラス中を引っかき回すようになったのだ。

先生が指してくれるまで「ハイ! ハイ!」を連発

 迷惑を被ったのは僕の母だった。

 小学生時代の僕は、成績はだいたいいつもクラスの上位で、スポーツも得意だった。こういう子供は、学校や先生から「しっかりした児童」として扱われ、概ねポジティブに評価される。親は晴れがましい気持ちで父母会に行くことだろう。

 しかし、僕の母はそうではなかった。父母会に出席すると、担任の先生から息子(僕)のことを誉められるどころか、「いつも嫌味を言われるのよ」とこぼしていた。結局、母は僕が小学校を卒業するまで、「父母会に出席するのは嫌だ」と言い続けた。後になって聞いたところでは、担任教師だけでなく、他の母親たちからも、「奥村君って、うちの子に勉強を教えてくれるって言ったそうじゃない。さすが余裕あるわねえ」などど嫌味を言われ続けたそうだ。

 ある日、小学校の父母会から帰ってきた母が、僕にこう聞いてきた。

 「お前、授業中にうるさくしているんだって? 先生に言われたよ」

 「そんなことないよ。ちゃんと授業を聴いているよ」