【第4回】はこちらをご覧ください。
安藤: あのー、よろしいでしょうか。今日の対談のテーマである「メディア化する個人のジレンマ」からだいぶずれているなと思いながら聞いていたんですが。話をそこに戻しませんか?
田原: いや、そこが問題なんだよ。メディアなんて嘘ばっかり吐いているんだよ(笑)。新聞もテレビもNHKも嘘ばっかり吐いているんだよ。
安藤: だからこそ、マスメディアに頼りすぎずに、今日のテーマでもある個人のメディアを持つことが大事なんだと思います。
田原: じゃあなんでNHKを信用するんですか? しつこいようだけど(笑)。
安藤: ええ? こちらは個人のメディアの話をしているのですが・・・(苦笑)。先ほど申し上げたことを繰り返すようですが、「NHKは信頼できる」ということを鵜呑みにしているんだと思います。イメージから。小さい頃から実家でも田舎でも、みんなでNHKを囲んで観ていましたから。
田原: 昔は田舎ではNHKしかなかったからねぇ(笑)。
勝間: メディアは本当の裏側の仕組みまで伝えるには尺が短かすぎるし説明できないということだと思いますよ。あとは、コントラバーシャルと言いますけれども、反論の多いものについては報道をやめたがる。そこですよね。
田原: 結局無難なことを報道するんだよ。
勝間: そうなんですよ。反対意見が出るようなものについては、どんどん消え去ってしまうので、そこの部分をいろいろなところで発言したいと思っているから、逆説的に私はメディアに出るんですよ。そうすると、その普通のメディアに出ている人間が他方ではこういうこともガンガン言っているとなると、興味を持ってもらえるんです。
田原: たとえば、野田さんは「原発の再稼働をすべきだ」と言った。朝日新聞、毎日新聞、東京新聞、全部反対した。何を言っているんだ、と。もっとおもしろいのは反対する論客だけを出している。でも、再稼働をしなかったら関西がどうなるかについては一言も言っていない。
勝間: そうですね。日経新聞くらいでしたね、普通の中立的な報道をしていたのは。
田原: あとはもうみんな偏向報道ね。それと、東京都の石原慎太郎知事が「東京都が尖閣諸島を買う」と言ったことについて、中国大使の丹羽宇一郎さんが「それは危険だ」と言ったら袋叩きにしているのね。外務省が丹羽さんを袋叩きにしているんだ。
勝間: でも、危険だというのは事実ですよね。それは別にまちがっていないですよ。
田原: この間沖縄で、中国のジャーナリストと日本のジャーナリストが討論したんだけれども、僕が「尖閣はどうしたらいい?」と言ったらね、中国のジャーナリストが「尖閣は俺たちのものだと中国が言ったら、日本側も同じことを言わざるを得ない。喧嘩になって水掛け論だ。あれは静かにしておいたほうがいいんじゃないか」と中国人が言っているんだ。
僕もそう思うんだけれども、それを丹羽さんが言ったら袋叩きでどの新聞も丹羽さんを擁護しない。本音はそこにあるくせに、「更迭だ」とか言っている。
勝間: 丹羽さんは元々ビジネスマンですから、現実論を言ったわけですよね。それに対してメディアの人たちは現実論を言わない人たちですからね。
田原: メディアはそういうことを言わないんだよ。安藤さん、わかる? いかにメディアがダメかということを。こんな例なら10でも20でもいくらでも言えるけどね。
勝間: でも、メディアでも種類があって、私はマスメディアが問題なんだと思いますけれどもね。いろいろ反論や反対意見がありそうなものについてはやらずに、割と迎合するような言論を作りがちになっている。
田原: だから、僕が勝間さんや安藤さんに期待しているのは、今の若い人たちは既製のメディアはダメだと、だから自分たちのメディアを作ろうとしているわけでしょう? そこが大事だと思う。
勝間: でも、震災でけっこうそういうことが知れ渡ったので、既存メディアに対しては不信感というより使い分けというものをやってきているんじゃないですか?
田原: せっかくここの大家の高木慎平さんがいるから、ちょっとその辺について聞いてみよう。今までのメディアがどうしようもない、と。このシェアハウスなんてのは新しいメディアを作っていこうとしているんでしょう? ちょっとその辺について言ってください。
高木: そうですね。僕らも25才前後の若者5人で住んでいるんですけれども、もちろんテレビも見なくなりましたし、サッカーを見たりNHKをたまに見るくらいですね。NHKはニュース速報があったときに見るくらいですね。
そのなかで、自分たちが感じている世の中の変化とか、それこそグローバリゼーションみたいな問題だったりとかは、ひしひしと感じるところがあるので、自分たちからそういう人たちを呼んで、こういう形で発信するということをもうやっちゃっていますので。
それは別にいわゆるマスメディアから情報を受けて、それを見て満足するというよりは、自分たちから第一次情報がどこにあるのか探すというふうになっていますね。
田原: 僕は今メディア批判をしたけれども、そんなことをやっているのは年寄りのジジイなんだ、と(笑)。そんなことはわかりきっている、だから自分たちが新しいメディアを作ろうとしている、そういうことなんだね。
勝間: だから、マスメディアはそういうものだと割り切っているということなんですね。
田原: そんなものを今更批判してもしょうがない、と。ダメに決まっているんだから、と。
勝間: それはダメというより、今のビジネスモデルがそうなっているんだからそういうものなんでしょうね。普通に情報を流してもらったりバラエティ番組を作るだけなら優れたメディアなので、それはメディアとして使い分ければいいという発想なんですね。
安藤: もしかすると世代論とも言えるかもしれませんが、NHKへの信頼性をイメージから信じ込んでいる私でも(笑)、マスメディアよりも自分がメディアを持つことや、そこから情報を発信したり受け取ったりすることを重要だと思っています。
そういう点では、「よるヒルズ」を主宰している高木さんと考えが似ているかもしれません。例えばtwitterでは面白いと思う人をフォローしたり、気になる人がいたらコンタクトを取って会いに行ったり。自分を中心としたコミュニティをつくって、その中で考えたり行動を起こしたりするイメージです。
田原: 僕は古い人間だから、2ちゃんねるにしてもTwitterにしてもFacebookにしても、いろいろなネットメディアは、あんまり信用できないんじゃないかな、と思っているんだけれども。
勝間: でもそれはマスメディアもみんないっしょですよ。その信用できないなかでどの人だったら信用できるとか。
田原: だから、信用できない、マスメディアもダメだ、と。新しいメディアも問題がある、と。じゃあどういうふうに生きればいいんですかね。
勝間: だから私はリテラシーという言葉を使っているんですけれども、いろいろなことに対して基礎的な情報や情報をとる能力そのものをメタ的に自分たちが持つことによって、自分たちで取捨選択すればいい。先ほど私はダイエットの話をしましたけれども、ダイエットの本だってたくさん嘘が書いてあるわけですよ。
でも、それを1冊1冊「これは本当、これは嘘」と糾弾していても仕方がないので、まあ100冊は大袈裟かもしれませんけれども、20、30冊読めばだいたいその骨子がわかりますから、だいたいどれが本当か嘘かはわかりますよね。
田原: 20、30冊読むというのはね、勝間さんがプロだから読めるんであって、普通はそんなに読めないよね。
安藤: 確かにそれだけひとつのテーマについて読み込むのは難しいかもしれませんが、興味のある分野、例えば自分にとってはソーシャルメディアとか働き方というテーマであれば、読めてしまうかもしれません。