アマゾンが書籍の不正レビュー狩りか?

〔PHOTO〕gettyimages

 アマゾンが書籍のカスタマー・レビューを大量に削除し始めたという。

●「Giving Mom's Book Five Stars? Amazon May Cull Your Review
New York Times, December 22, 2012

 ニューヨーク・タイムズの記事によれば、アマゾンはそうした事実を公式に認めているわけではないが、多くの作家が最近、自著に寄せられたレビューが削除されていると証言しており、その総数は数千に上ると見られる。

 背景には幾つかの理由が考えられるという。一つは英米の著名なミステリー作家数名が、いずれも他人になりすまして自分の作品を激賞する五つ星レビューを投稿すると共に、ライバル作家の作品をこきおろす一つ星レビューを投稿していた。これが最近、発覚したこと。

●「RJ Ellory: detected, crime writer who faked his own glowing reviews
The Telegraph, 02 September, 2012

 もう一つの理由は、多くの作家がかなり強引な方法で多数のレビューを「書かせて」いる節があり、それが目に余るようになってきたので、アマゾンが仕方なく手を打ったというもの。日本ではどうか分からないが、少なくとも米国には作家がお金を払えば、その人の作品にカスタマー・レビューを多数投稿する会社があるようだ(たとえばレビュー50本につき1,000ドルといった形で)。

 当然ながら、それは一般読者を装って行われる。もちろん道義的には許されない行為だが、必ずしも違法行為とは言えないようだ。いわゆるステマ(ステルス・マーケティング)の一種という位置付けになるのだろう。特に無名の、あるいは自己出版(self publishing)した作家らが多用しており、それがかなりの効果をあげることもあるらしい。

 実際、レビューが50本も載っていたら、内容はとにかく、かなり注目すべきテーマの本なのだなあ、とユーザーは思ってしまうのだろう。

納得できない人達もいる

 今回、アマゾンがとった措置は、そうした疑わしいレビューを削除するためと見られている。ただし同社がそれを公式に認めていない以上、どのような基準でレビューを削除しているのかは不明だ。

 同じ記事によれば、ある作家の場合、自分の妹や親友が書いてくれた五つ星のレビューが削除されたという。つまり近親者が書いたレビューは駄目、ということらしい。また、ある作家が別の作家の作品を批評したレビューも許されないという。

 一方で、アマゾンで発売開始された当日に、既に多数のレビューが投稿されている本がある。これは著者、あるいは出版社などが事前に多数の人々に本を配布し、意図的にレビューを書かせたと見られても仕方がない。が、こうしたレビューは見逃されているという。

 要するにレビューを削除する基準がよく分からないし、散見した限りでは、必ずしも誰もが納得できるフェアな基準とは言い切れない。

 もう一つ注意が必要なのは、アマゾンが一体、どのようにして不正レビュー狩りをしているのか、つまり、その方法である。たとえば大量のスタッフを動員して、疑わしいレビューを探し出しているのだろうか。それとも何かAI(人工知能)システムのようなものを使って、一種のデータ・マイニングのような形で、それを行っているのだろうか?

 アマゾンには「メカニカル・ターク」と呼ばれるグローバルな動員システムがあるから、それを使ってやる可能性も無きにしも非ずだ。が、筆者はむしろ後者の可能性が高いと思う。

 仮に疑わしいレビューを削除するとすれば、それは特定の作家や作品を狙い打ちするわけにはいかない。公正を期す以上、全ての著者、全ての作品を網羅しなければならないはずだ。となると、どう考えても人手では間に合わない。一種の自動的AIシステムを使わざるを得ないと思われる。

 アマゾン自体、ないしはウエブ上の個人情報をかき集めれば、データ・マイニングの手法で著者の近親者を割り出す事くらい簡単にできるはずだ。もっとも、それがいいことかどうかには議論の余地があるが。

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