[ボクシング]
杉浦大介「壮絶KO後に再び浮上した禁止薬物問題」

スポーツコミュニケーションズ

第三者による検査の徹底を

 マルケスがシロかクロかに関わらず、ボクシング界全体が大きな問題を抱えていることは紛れもない事実。そして、規模、試合内容ともに年間最高レベルだった興行のあとに、こうした疑問を呈する意見が吹き出していることは、逆に問題と向き合うチャンスに成り得るのではないかと思う。

 このままでは、いずれ悲劇的な事態が起こってもまったく不思議ではない。想像してみてほしい。もしもパッキャオ、メイウェザー・クラスの著名ボクサーがリング上で事故に遭い、その後に加害者となってしまったボクサーの薬物検査で陽性反応が出てしまったら……。

 そのときに業界全体が被るダメージは、想像するだけで恐ろしい。禁止論を唱えるものたちは色めき立ち、主要なスポンサーはすべて離れ、ただでさえ好調と言えないボクシング人気は低下の一途を辿るはずである。そんな悲劇を許さないために――。ルー・ディベラのようなプロモーターがすでに提言している通り、PED検査の基準をより厳しくする必要がある。

パッキャオとマルケスの第5戦が来年9月に実現するとの予測も出始めている。

「2013年にパッキャオ対マルケスの第5戦が実現するとしたら、五輪スタイルの徹底した薬物検査を実施する絶好機ではないか。過去は変えられないが、未来を良くするためにできることはある。プロモーターの手から離れたところで、厳格な検査方法を確立しなければならない」

 ウェブサイト「MAX BOXING」のスティーブ・キム記者の意見に、まずは全面的に同意したい。パッキャオ、メイウェザー、マルケスのようなビッグネームが絡む試合からWADA(世界アンチ・ドーピング機構)、VADA(ボランティアのアンチ・ドーピング機構)の手による検査を徹底すれば、のちのちへの影響力も強いはず。ドーピング検査をより綿密にすれば、まずは魔女狩り的に有名選手が次々とひっかかってファンを落胆させてしまう可能性もある。

 それでも、前述したようなボクシング界にとって悪夢のシナリオが現実になるよりは良い。禁止薬物を巡る騒ぎがこれまで以上に盛り上がった今こそが、クリーン化の気運を高める、またとない機会なのである。

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを 中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の 媒体に記事、コラムを寄稿している。
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