[ボクシング]
杉浦大介「壮絶KO後に再び浮上した禁止薬物問題」

スポーツコミュニケーションズ

今年に入って陽性反応が続出

 これまでも、ボクシングの世界にPED (禁止薬物)が蔓延しているとの噂は絶えなかった。パッキャオ、フロイド・メイウェザーの周囲にもステロイド使用疑惑があったのを耳にしたことがあるファンは多いだろう。

 特に検査方法を厳しくしたとされる今年に入って、アンドレ・バート、アントニオ・ターバー、ラモント・ピーターソンといった一流どころから陽性反応を示す選手が続出。10月にはニューヨークでの興行の直前、先のモラレス自身が検査に引っかかり、試合挙行を巡ってすったもんだがあったのは記憶に新しい(結局は強行され、モラレスはダニー・ガルシアにKO負け)。

 同じ10月中には「ESPN.com」が、ロイ・ジョーンズ、イベンダー・ホリフィールドといった元スーパースターたちを過去に薬物使用していた可能性がある選手として名指し。同ウェブサイトに記事を寄せたエリック・ラスキン氏(元リングマガジン記者)は、「かつては“75%のボクサーがPEDを使用している”と聞けば疑ったはずだが、今では“75%では少なすぎるのではないか”と考え始めている」とまで記述している。

バートはステロイド陽性反応を示し、6月に予定された試合がキャンセルとなる事件もあった。

 この問題の背後には、かつてのMLBと同じように、ボクシング界ではこれまで薬物蔓延に関して目がつぶられてきた事実がある。たとえ陽性反応を示しても真剣には捉えられず、前述のようにモラレスのタイトル戦は強行された。バートのように出場停止処分を受けても、さほど大きな話題にはならず、復帰戦はすぐにアメリカ国内のメガケーブルテレビ局で生中継。そうやって問題が無視されてきたがゆえに、かえって雪だるま式に膨らんでいったのである。

 年間最高試合候補と呼ばれるほどの好ファイトとなったパッキャオ対マルケス戦の後に、こんな話をしなければいけないのは残念ではある。マルケスが違反をしたという証拠は出ていないにも関わらず、疑いだけが膨れ上がっていることを腹立たしく思う人もいるのだろう。筆者がこのコラムを書いたことにも、憤りを感じる人もいるかもしれない。ただ、その目的がマルケスを糾弾するためではないことは理解してもらいいたいと願う。