さらにオリンピアンたちも最初の挨拶では、にこやかな表情を見せていたものの、スタート地点では意外に真剣な表情に。とはいえ現役を離れて長い方や、「走る」という行為に縁がない方々など一般参加者より速くない方も少なくないわけで……。
それでも一生懸命に遊ぶことには長けた人たちなので、まじめに走り、楽しんでいるのが伝わってくる。「いやぁ、思わず真剣になってしまいましたが、さすがにダメですね。このままでは終われないので練習します!」という吉原さんのゴール後のコメントがそれを代表している。そんないい雰囲気は伝染するのだろう、会場内の参加者もスタッフも含めて心地良い空間が生まれていた。
「一流選手と空間をともにして、スポーツの楽しさを共有する」というイベントの狙いは十分に果たしていたと思われる。だが、果たして本題の「オリンピック・パラリンピック招致ムーブメントの盛り上げ」というのはどうだったのだろうか。無理やりなロジックでこじつけることはできるかもしれないが、正直なところで言うならば、その効果は図りかねる。
ただ、それを高めていくためにもスポーツの魅力や、楽しさを実感している人口を増やすことも大切だろう。さらに本物が解き放つ不思議なエネルギーや、それが周りに与える影響を感じてもらう機会は必須である。そういう点では十分に意味のあったイベントになったのかもしれない。
ともあれ、一生懸命楽しんでいる参加者を見ていると、そんなことを考えることさえ不要に思えてくる。何かのために「スポーツをする」「させる」ということ自体がナンセンスなのかもしれない。
「スポーツとは遊ぶこと。それも一生懸命遊ぶこと」
そんなことを考えながら、ラストランナーを迎えてEKIDENはフィナーレを迎えた。