第16回 勝新太郎(その一)
破天荒な俳優――。大変な浪費家だった、六代目尾上菊五郎に真っ先に惹かれる

福田 和也

 後になって、その男がジェームズ・ディーンだと識った。帰国した勝は、映画俳優の道を歩む事にした。

 警視総監、田中栄一に「勝新太郎」という名前をつけて貰った。その後の勝の人生行路を考えると、名前を警視総監に貰った事は、絶妙の辻占いとも云えない事はないだろう。
 デビュー作は『花の白虎隊』。八尋不二、脚本。田坂勝彦監督だった。

勝新太郎(1931~1997)「続花頭巾」(1956年)より。大映に同期で入った歌舞伎役者・市川雷蔵と「二枚看板」として活躍する

 同期入社の市川雷蔵、花柳武始が共演で、歌舞伎役者の雷蔵、新派の花柳、長唄の勝が揃って新世代のスターを世に出そう、という目論見である。

 しかし、実際には市川雷蔵をスターとして売り出す企画であった。雷蔵には専用の自動車があり、弁当も特別誂えだった。一方、勝はスタッフと一緒にバスで移動し、スタッフと同じ弁当を食べた。

 待遇の差は悔しかったが、演技が身についている雷蔵と、芝居らしい芝居をした事がない自分との扱いが異なるのは当然の事だ・・・・・・。

『白虎隊』のロケが終わった後、東映の東千代之介と中村錦之助が撮影所にやってきた。女性ファンたちが、錦之助にむけて黄色い声を上げている。

 錦之助は、朋輩と云って通る間柄だった。

 子供時代、錦之助が『松の緑』を踊る時、勝が三味線を弾いた事がある。東とも藤間の宗家で稽古をした間柄。

「おい、そこの仕出し、早く鬘をみな拾わんかい」

 助監督が、怒鳴った。