『東京湯巡り、徘徊酒 黄昏オヤジの散歩道』著:島本 慶
黄昏オヤジの散歩道

 ん?日本酒一合が二〇〇円!いいのかこれで。刺身盛三八〇円。恐ろしく安い、しかも量が多い。お通しも旨い。これじゃ客が入るわけです。それにこのマッチャンのキャラが良くて、すっかり人気者ですよ。

 ちなみにこの店は「熊八」といいます。居抜きで借りた店の前の看板のままの店名なんですな。このあたり、アバウトなマッチャンらしいっす。そんなわけで、この「熊八」に来る時は、その前に東北沢にある「石川湯」という銭湯でひとっ風呂浴びるというわけです。これはこの度出版させて頂いた『東京湯巡り、徘徊酒』にも出てきます。

 でもねぇ、いい居酒屋を見つけるとつい足が向いてしまう。カウンターに座って、焼酎のお湯割か何かすすって、いやなことすべて忘れて、ほんのひとときの幸せを感じるのは私だけでしょうか? 最近は男も女も独り暮らしが多いみたいだし。安くて美味しくて、楽しい客たちと名物オヤジとの心地良い時間。

 どこにでもある風景ですよ。おそらく日本全国、どの盛り場にもあるはず。どの駅で降りても、駅前とかじゃなくて裏路地には必ずそんな店があるはずですよ。もぉ、ポッと明かりのついたあの赤い提灯。しかしこの赤い提灯ってのはスゴイですな。かなり遠くからでも目に入るくらいインパクトがあります。

 そんなわけで私、東京の色んな所をウロウロして銭湯に入り居酒屋を物色しまくったってぇわけです。これはほとんど普段の行動そのままなんですけど、いざ活字にするとなるとボーッと、ふわぁ~っと酔ってられましぇん。ある程度メモんなきゃなんないしね。

 それに私の場合は終わりがないんです。飲みはじめると、ヘベレケになる悪いクセがあってしかも何も覚えていないことが多くて困っちゃいます。なにしろ最後にシメませんから。お茶漬けとか、入麵とか、おにぎりとか、いわゆる炭水化物系が駄目なんです酔うと。

 でもそのおかげで、不思議なことに二日酔いってのがほとんど無いんですよ。おまけに豚みたいに太ってた体が今じゃすっかり細くなっちゃって、楽になりました。飲み友達はやつれたとか、干涸らびたとか、それは絶対に癌だとか、決めつけちゃう奴もいて困っちゃいます。

「癌なんだってねぇ!大丈夫、どうせアンタのことだから前立腺だろ?違う?胃か!胃なら切っちゃえば平気だよ。気を落とすなよ!」