『中国共産党の経済政策』著:柴田聡
様変わりの中国経済

 最後に、在留邦人の増加等に伴い、中国国内の在外公館ネットワークも拡大している。北京の大使館を筆頭に、現在七公館が設置されている。日本企業が数多く進出する上海、広州、香港、青島といった沿岸部の大都市に加え、瀋陽や重慶といった重要拠点には総領事館が置かれている。

 このうち青島は〇九年に開設された新しい在外公館だ。また、瀋陽総領事館と同じ遼寧省内であるが、多くの日本企業が進出する大連には出張所があり、西北部の中心都市である西安にも出張所が近い将来設置される予定である。今後についても、大手日系自動車メーカーが進出する武漢など、更なる在外公館の増設を求める声もあるようだ。

 これらの数字からも、日本と中国の経済関係が益々深まっており、中国全土で日本企業や在留邦人が活動している実態がよくわかる。今後、日本人の活動の舞台は、さらに中国内陸部へと展開していくことが予想される。内陸部の重要拠点である武漢、重慶、成都には、既に日系銀行の支店も開設されており、企業進出の環境も整備が進んでいる。

 中国はいまや日本にとって最大の貿易パートナーとなり、中国の景気によって日本経済も大きな影響を受ける時代になった。中国の経済規模は一〇年以内にアメリカを抜き、米中逆転が現実となる可能性も高い。中国の更なる経済成長に伴い、日本にとっての中国の位置付けも変化していくだろう。現時点では、加工型貿易モデルの製造拠点という色彩がまだ強いが、次第に巨大な販売市場へと転換していくことになる。

 政府間でも自由貿易協定に関する議論が本格的に開始されたが、アジアの地域経済は更にボーダーレス化が進み、巨大な市場を抱える中国との関係は、一層重要性を増していくことだろう。将来の日本経済を考える上でも、今後の中国経済を展望することは重要な前提となる。

 こうした問題意識の中で、中国との経済外交の最前線で活動してきた自分自身の経験を、日本の読者の方と共有できればと考えるようになった。中国経済は以前よりポピュラーになったとはいえ、中国独特の仕組みや政策手法も多く、まだまだ外国人には見えにくい面がある。

 また、日本における中国経済論の中には、安易な中国バッシングや極端な脅威論も散見される。中国の最高指導者が交代し、中国が今後進む方向について関心が高まる今こそ、冷静で客観的な議論を行う良い機会ではないかと思った。

関連記事