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「資産を増やすより減らさない老後」のつくり方【第3回】

平山賢一(東京海上アセットマネジメント投信チーフストラテジスト)

 わたしは勉強会でさらに話を続けました。

 「また、タンス預金であれば、値下がりしない代わりに、値上がりすることもありません。モノの値段が下がるデフレのときには、お金をタンスに寝かしているだけで、〈買うチカラ〉は増えていきます。しかし、インフレのときには〈買うチカラ〉が減ってしまう。タンス預金は、モノやサービスが値下がりすることに賭けていることになるわけですね」

 そして、おもむろに次のような質問を会場の参加者に投げかけてみました。

 「12年間、タンス預金の代わりに、ゴールド・バー(金地金)を寝かしておいたらどうなっていたでしょうか?」

 実は、この質問に対する答えも、びっくりするようなものなのです。1999年末の金価格は1オンス当たり288ドルだったものの、12年後の2011年末には、同1564ドルまで大幅に上昇しています。マクドナルド社の株を大きく上回り、5.4倍、440%も上昇しているのです。これを年率(複利)に換算すると15%という結果。

 ゴールド・バーにしておけば、2011年末にはビックマックを135個も買えたことになります(543ドル÷4.0ドル≒135個)。ゴールド・バーの保有によって、ビックマックを買うチカラは、3.4倍になっていたのです(135個÷40個=約3.4倍)。

〈買うチカラ〉を減らさないための鉄則

 デフレのときは現金紙幣を寝かしておけばよく、一方、インフレのときには金地金を寝かせておけばよかったということです。ただし、どちらも環境が逆の方向に進めば、〈買うチカラ〉は、維持するどころか減ってしまうことになるでしょう。

 その意味では、タンス預金もタンス地金も、不確実な世の中で賭けをしているようなものということになります。仮に、これから老後を迎える人にとって、せっかく貯めてきた虎の子の資金であれば、このように寝かしておくのはあまりにも無頓着と言わざるを得ないでしょう。

 「買うチカラを減らさない」というのは、デフレになろうがインフレになろうが、買うことのできるモノや、手に入れることのできるサービスの量を減らさないことを意味します。

 私たちは、どうしても名目の世界で生きていますから、資産の額そのものが増えたか減ったかで判断しがちです。しかし、限られた老後を過ごすための資金は、時間を経て、食料や光熱費、そして医療費などを支払うためのもの。今ある資金は、将来買うモノやサービスと、密接に結びつけて考える必要があるわけです。