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奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第8回】
息子を大爆発させた妻の一言

奥村 隆 プロフィール

 息子は今、近所の小さな学習塾に、週に一度だけ通っている。でも、考えてみれば、たしか毎週火曜日の夕方のクラスで、土曜ではなかった。ならば、なぜ、今日の午後に行くという話になったのだろう?

 あ、そういえば・・・と急に思い出した。先日、妻が「塾が土曜日の午後3時から4時半まで補習授業をやってくれるのよ」と話していたっけ。でも、それは来週の土曜日のはずだった。僕が、

 「どういうこと? 土曜に塾に行くのは来週だって聞いてるけど」

 と尋ねると、息子は我が意を得たりとばかりに、さらに声を張り上げて泣きわめいた。

 「お母さんが一週間、勘違いしていたんだって。補習があるのは、来週の土曜日じゃなくて、今日だったんだって!」

 なるほど、そうだったのか、と納得している父親の前で、息子は再び、

 「『今日の午後、塾に行きなさい』って言うんだよ。そんなことを突然言われても・・・。どうすればいいんだよ~!」

 と叫ぶと、今度は僕の布団に突っ伏しておいおい泣き続けた。物事を実行するのが予定から1分ずれても、苛立ち、激怒する息子である。それが1週間も違うとなると、本人にとっては、この世が終わるほどのショックだろう---。僕はそう考えたが、息子にかける言葉はすぐに思いつかなかった。

「お母さんは僕のことが嫌いなんだ!」

 まもなく、妻が慌てた様子で寝室にやってきて、

 「さっき、塾から送ってきた資料をもう一度読みかえしたら、補習は来週じゃなくて今日だったの。お母さんが間違えちゃった。ごめんね」

 と優しい口調で息子に謝った。

 でも息子は「今日、塾に行くのは嫌だ!」と赤ん坊のように駄々をこねるばかり。妻が何度も謝っても、同じことを延々と大声でわめき散らす。そのしつこさに、いつも穏やかな妻もだんだん苛立ってきたようで、ついポロリと、

 「間違えたものはしょうがないでしょう。補習なんて、たったの1時間半じゃないの」

 と言ってしまった。こうなると、息子はもう大変である。