最高のアドバイザーが新著で教える
「資産を増やすより減らさない老後」のつくり方【第2回】

平山賢一(東京海上アセットマネジメント投信チーフストラテジスト)

 実は、このことは、私たち庶民とは別世界の話とばかりは言っていられないのです。老後を迎える60代前後の人々は、「人生における富裕層(人生の中で最も裕福な時を過ごしている人々)」であるからです。

 総務省の家計調査によると、60代、70代の平均的な金融資産(負債控除後)は、約2000万円。他のアジア各国に行けば、これだけの金融資産を保有している人は、円高の影響も手伝って、間違いなく大金持ちに違いありません。

 そのため、筋金入りの富裕層と同じように、金融資産の〈買うチカラ〉を増やすより減らさないことに注力すべきなのです。これは、拙著『「増やすより減らさない」老後のつくり方』のメインテーマでもあります。

 ところで、この人生における富裕層は、これから、老後の毎月の支出を考えると、自動車や家電製品などの購入は減少し、食料(食費)、エネルギー(光熱費)などの比率が高まっていくことが予想されます。興味深いことに、いずれも日本が海外からの輸入に頼っているものばかり。

 前述した、筆者が2003年に会ったファミリーオフィスの最高投資責任者に言わせれば、「食料やエネルギーなどを供給する国々の資産を保有しておくべきだ」となるかもしれません。

 ここまで深読みしなくても、少なくとも私たちが生活する上で必要不可欠なモノやサービスの価格変化を下回るような資産運用は、してはならないはず。具体的には、消費者の購入するモノやサービスの価格推移を代表する「消費者物価指数(CPI)」の変化を下回るような事態だけは回避したいところです。

老後生活の最大の敵はインフレ

 昔から、「物価の変化に負けずに老後の生活を維持する」というのは大きなテーマでした。18世紀末のフランスの老後生活は、その顕著な事例の一つです。フランス革命により、大都市パリの庶民の生活費は上昇の一途をたどったからです。

 現在の消費者物価指数に相当する一般物価は、5年間で34倍、野菜やワインは30倍、小麦は120倍、砂糖は344倍になったとのこと。この間、年金受取額がほとんど増えなかった年金受給者は瀕死の状態に陥ったのです。まさに、老後生活の大敵は、インフレだったのです。

 現在の日本では、このような過激なインフレの可能性は低いかもしれません。しかし、毎年4パーセントのインフレであっても、18年経過すれば、物価は2倍になることになります。平均寿命から考えても、老後は、20年以上続く可能性が十分にあります。

 しかも、わが国の場合には、政府債務の多さから、消費税は10パーセントで維持されることはなく、さらに上昇するとの声が大きくなっています。消費税の引き上げ分は、その大部分が消費者物価指数の上昇につながるだけに、注意が必要です。

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