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「資産を増やすより減らさない老後」のつくり方【第2回】

平山賢一(東京海上アセットマネジメント投信チーフストラテジスト)

 「円高が進む中で、円建て資産を持つことは、運用資産の購買力(買うチカラ)を維持することに貢献するからだよ。それに、米ドルと比較すれば円高かもしれないけど、韓国ウォンと比較すれば、日本の輸出産業の競争力は有利でさえある」

 世界を股にかけて旅行し、世界各国からモノやサービスを買い続けるお金持ち一族にとっては、円高により日本のモノやサービスが値上がりしてしまうと、それだけ買いにくくなります。この場合は、円建てのモノやサービスを〈買うチカラ〉が衰えてしまうということを意味するのです。

 「日本が提供するモノやサービスの魅力は高いのだから、将来、日本から買うと想定される分の日本円は、事前に手当てしておきたい」というのが本音のようでした。日本の製品を購入することを前提にして、先んじて投資しておくという話だったのです。〈買うチカラ〉を減らさないという姿勢が明らかな事例の一つと言えるでしょう。

 今振り返ってみると、2003年以降、2005年末にかけて、為替市場は落ち着いた展開を見せる中、日本株は大幅に上昇しました。結果的に、この時の日本株買いの判断は、正しかったのです。

〈買うチカラ〉を減らさないことに徹する筋金入りの富裕層

 特に欧州で、数百年にわたって生き残ってきた富裕層は、数限りない政治的混乱や経済変動を乗り越えて、何世代にもわたって富を蓄積してきている一族です。

 人類は、長い歴史の中で、何回も借用証書や紙幣が紙くず同然になる経験をしてきました。したがって、このような危機を回避できなければ、富裕層であり続けることはできなかったはずです。たとえ政府が発行する紙幣であっても、その政府が危機に陥れば、だれもその紙幣を受け取ってくれなくなる。そのことを、お金持ち一族は経験を通して学んできたのです。買い物で紙幣が使えなくなるということは、〈買うチカラ〉がゼロになることを意味します。

 誰も受け取ってくれなくなった紙幣や、債務返済が不可能になった時の借用証書は、〈買うチカラ〉はゼロになるため、最も敬遠されてきたのです。

 この筋金入りの富裕層は、すでに富を築き上げている点で、庶民とは違っています。これから資産を積み上げなければいけない庶民の場合、とにかく増やすことに力を注がなければならないからです。

 いったん富を築き上げてしまえば、たいがいは、それを守りながら「減らさない姿勢」に転じればよいはず。欲張って増やすことばかりに心を奪われていると、いずれは大損失の没落の道を歩むという事例は山ほどありました。生き残っている筋金入りの富裕層のほとんどが、「減らさない姿勢」を貫くことで富裕層であり続けている、と言い換えることもできます。

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