長谷川幸洋 『誤報から始まった「安倍・白川バトル」を煽るメディアの病根』

安倍発言をミスリードした記者たち

〔PHOTO〕gettyimages

 前回の記事で「記者が経済学の基本をきちんと勉強していない」と書いた。まさに、それが証明されたような「事件」が起きてしまった。それも、この国の将来を左右する総選挙の戦いが、事実上、始まっている真っ最中に、である。

 多くの新聞やテレビが「自民党の安倍晋三総裁が国債の日銀引き受けを要求した」という誤報を流してしまったのだ。それは単に1回の誤報にとどまらなかった。

 報道は真実であるという前提で、日銀の白川方明総裁は記者会見で「発展途上国でもIMF(国際通貨基金)が中央銀行制度に関する助言を行う際に、行ってはならない項目リストの最上位に掲げている」と批判。経団連の米倉弘昌会長も「財政ファイナンスは禁じ手であり無謀」と追い討ちをかけた。

 そうした大物たちの批判をメディアが再び報じることで「安倍が国債の日銀引き受けを要求した」という話は、あたかも本当であるかのように独り歩きし既成事実化していったのである。

 私は11月23日公開の「現代ビジネス」コラムで、これらの批判が事実に基づいたものではなく「メディアが勝手にでっち上げた空中楼閣のような論争」であると指摘した。報道が誤報であったことは、いまでは安倍発言を収録したビデオによって証明されている。

 そこで今回は、なぜこうした誤報が起きてしまうのか、なぜ誤りは正されずに根拠のない論争にまで発展してしまうのか、そもそも新聞記事はどうやって作られていくのか、といった問題に迫ってみたい。それこそが、日本のメディアの病根を象徴的に映し出していると思うからだ。

 安倍が問題の発言をしたのは、11月17日の自民党熊本県連における講演だった。私が先のコラムで誤報と指摘した後で講演の模様をあらためて報じたテレビ朝日やNHKのビデオ映像によれば、安倍は次のように語っていた。

「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらうという買いオペをしてもらうことによって、新しいマネーが強制的に市場に出ていく」

 ここで安倍は「日銀引き受け」とは一言も言っていない。発言を聞いた記者の側が「買いオペをしてもらうことによって」の部分を削除し、そのうえで「日銀引き受けを検討する考えを示した」といった調子で独自の解説、というより推測をつけ加えて記事を書いたのである。・・・(以下略)

メルマガ『現代ビジネスブレイブ』より

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