創刊28周年企画 重大事件、事故、天災「九死に一生」生存者たちの秘話15 part1

フライデー

 それから、さらに17年の月日が過ぎた今も、吉崎さんは娘の美紀子さんと一緒に都内で静かに暮らしている。

「友人から北海道の温泉旅行に誘われた時は気持ちが動いたんですけど、やはり飛行機に乗るのは無理でした。別に飛行機を憎んでいるわけではないんですけどね。でも、娘も高校の修学旅行以降は、一度も飛行機に乗っていません」

 27年の歳月が過ぎても、吉崎さん母子の心の傷は決して癒えることはないのだ---。

なだしお事件 '88年7月23日
海中に投げ出された息子を救った奇跡のブイ

海上に引き上げられた第一富士丸。伊豆大島での釣りに向かう際、事故は起きた〔PHOTO〕乾 晋也
息子を救ったブイと当時の横井さん。沈む船の渦で「流れが速かった」という

「衝突のショックで、私たちは甲板の床に投げ出されました。その時、積んでいたブイが偶然手元に転がってきたんです。無意識に手に取り、足下にあったロープを通して、息子の体にグルグルと巻き付けました。船が傾き、海中に投げ出されたのはその直後です」

 24年前の事故を振り返るのは、『なだしお事件』の生存者、横井時惟さん(71)。午後3時38分、釣り客など48人を乗せた遊漁船『第一富士丸』が伊豆大島を目指して航行中、横須賀港の沖合で海上自衛隊の潜水艦『なだしお』と衝突。第一富士丸の船内に取り残された乗客ら30人が死亡した。衝突から沈没までの時間がわずか1分間だったと言われる中で、親子二人が生還したのは奇跡に近い。事故当時、横井さんは当時中学1年生だった息子と、甲板の上で海を眺めていた。