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奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第5回】
「お前は天才だ」と呼ばれた日

奥村 隆 プロフィール

 僕たち3人は、番組を楽しむポイントがそれぞれ違っていた。

 サッカー部のTは、ゴシップ雑誌に載っているような噂が大好きだった。たとえば、「演歌歌手のKは有線放送に自分でリクエストして、『ベストテン』の上位を狙っているらしい」といった、どこから仕入れたのか、はなはだ怪しい業界の裏話をいつも自慢げに披露する。

 バレー部のMは、普段は真面目な男なのだが、「聖子ちゃんのスカートが長すぎて脚が見えなかったのにはむかついた」とか「キョンキョンの脚はキュートだよ」などと、なぜかアイドルの脚の話ばかりする。「サザンのファンのくせに何を言ってるんだ」と僕は内心思っていた。当時はそんな言葉を知らなかったが、Mは「脚フェチ」の傾向があったのかもしれない。

 そして僕は、「ザ・ベストテン」を見始めた小学校低学年のときから、冒頭に流れる各種ランキングの分析を自分なりにして、友達に話すのが大好きだった。たとえば、こんな感じである。

 

 「松田聖子の『チェリーブラッサム』は今週、レコード売り上げが1位、葉書の数も2位だった。有線ランキングで9位じゃなければ、総合1位だったのにな・・・。

 やっぱり、有線では演歌が強いよ。竜鉄也の『奥飛騨慕情』なんか、レコード売り上げは下位なのに、有線ランキングではここ3週ほど、1位→4位→2位となっているからね」

 断っておくが、これらの数字は例として適当に書いたものである。でも、松田聖子と竜鉄也が同時にランクインしたことがあるのは事実だ。『チェリーブラッサム』と『奥飛騨慕情』が同時期に総合ランキングに入ったのだ。

 「ザ・ベストテン」では、番組の最後に、スタジオで歌った歌手たちと司会者が一緒に記念写真を撮影するのが慣例だった。松田聖子と竜鉄也が一緒にソファに座ったシュールな光景を、僕は今も鮮明に覚えている。

お前、細かいランキングをどうやって記録しているの?

 TとMは、僕の各種ランキング話を、いつもフンフンと頷きながら聞いてくれていた。そのため、僕は、彼らも独自のランキング分析を行っているのだろうと思い込んでいた。しかし、「サザンの総合ランキング1位」で盛り上がったこの日、思わぬことがわかった。

 期末テストが終わった後、またTとMをつかまえて僕なりの分析を披露したところ、Tに突然、こう言われたのである。

 「おい奥村、お前さぁ、毎回、4つの細かいランキングをどうやって記録しているんだよ? テレビを見ながらランキングを読み上げて、その声をラジカセで録音してるのか? でも、あんなに短い時間で全部読み上げることなんかできねえよなぁ・・・。俺もあの4つのランキングをメモに取っておきたくてさ。お前がどうやってるのか、方法を教えてくれよ」