ビールを飲むとトイレが近くなる「本当の理由」を知ってますか?

医学を笑えば病気も笑う
久坂部 羊 プロフィール

気管の入り口には声門があり、喉頭蓋でフタをすると、声が出ない。それを無理にしゃべると、空気が出入りして、食べ物が気管に入ってむせる。だから、食べているときはしゃべってはいけないということになる。

酒に酔ったり、年を取ったりすると、このフタがぴったり閉じなくなる。だから酔っぱらいや高齢者はよくむせる。

 

高齢者がむせるとしっかり咳ができないので、気管に残った食べ物についた雑菌が繁殖して、肺炎を起こしやすい。これが「誤嚥性肺炎」で、命に関わることもある。

だから、頻繁にむせるようになると、口から食べさせるのは危険なため、今、マスメディアでよく問題になっている「胃ろう」をつけることになる。

胃ろうとは、腹部に穴を開け、胃に直接チューブを入れて、流動食を入れる方法である。胃ろうをつけると、誤嚥の危険性は減るが、口から食べる喜びは奪われ、重症の認知症や寝たきりの人の場合は、果たして本人のためなのかどうかという問題が生じる。

口から食べる喜び……? Photo by Getty Images

ふだん何気なく飲み込むゴックンの話から、超高齢社会の介護問題にまでつながるのが、医学の身近なところである。

もう一つ、講義で学生たちによく話すのは、現代医療の幻想や思い込みの多さである。最近、EBM(Evidence Based Medicine=根拠に基づいた医療)が主流となり、さまざまな医学常識が覆りつつある(それまでの医療が、根拠に基づいていなかったというのも驚きだが)。

たとえば、消毒は傷の治癒過程を阻害するので、怪我は真水で洗浄するほうがよいとか、牛乳にはカルシウムが多く含まれるが、飲みすぎると逆にカルシウムの排泄が進み、高齢者は骨折しやすくなるとかである。

日本人は健康不安が強く、そこに医療業界や製薬業界の思惑が絡んで、過剰医療の状態になっている。人間ドックやがん検診も盛んに行われるが、世界的には特異な状況だ。

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