ビールを飲むとトイレが近くなる「本当の理由」を知ってますか?

医学を笑えば病気も笑う
久坂部 羊 プロフィール

ほかにも、世間にはあまり知られていないが、医学がらみのおもしろい話は、けっこう身のまわりにあふれている。

アドルフ・ヒトラーは左側の睾丸がおなかの中にある停留睾丸で、睾丸が右側一個だけだったとか、ロック歌手のデビッド・ボウイは左目の瞳孔が常に開いているので、左目は眩しいにちがいないとか、手塚治虫の『ブラック・ジャック』の一話「イレズミの男」に登場する全身刺青の額縁入り皮膚標本は、今も阪大医学部の法医学教室に残されているなどである。

それらの話を雑談風に取り入れながら、医学のあれこれを読み物風に書いたのが、今回上梓した『モーツァルトとレクター博士の医学講座』である。

元になったのは、私が福祉系大学で講義している『医学概論』の講義ノートだ。医学というとむずかしいと思う学生が多いので、できるだけ親しみが持てるよう、歴史上の人物や小説、漫画などにからめながら話すようにしている(それでも居眠りをする学生は多いが)。

 

私が講義で伝えたいと思うのは、身体の仕組みや日常の身体の反応を、医学的に知る楽しみである。

たとえば、ビールを飲むとなぜトイレに行きたくなるのか。アルコールに利尿作用があるのなら、おもしろくも何ともない。アルコールにあるのは利尿作用ではなくて、下垂体で作られる「抗利尿ホルモン」の分泌を抑制する作用である。抗利尿ホルモンの働きは、利尿を抑えることである。すなわち、アルコールは利尿のブレーキにブレーキをかけるため、結果的に尿が増えるのである。

では、なぜアルコールは抗利尿ホルモンを抑えるのか。それはやはりアルコールが身体に悪いので、下垂体が早く排泄するように反応するからだろう。そう思ってビールを飲み、何回もトイレに行くと、身体がしっかり働いてくれているなと実感できる。

ものを飲み込むとき、食べ物や飲み物が気管に入らないようになっている仕組みもよくできている。「喉頭」(のど仏の部分)に、「喉頭蓋」というフタがついていて、飲み込むときに、気管の入り口をぴったり閉じるようになっているのだ。

Larynx, Drawing (Photo By BSIP/UIG Via Getty Images)喉頭蓋の作用 Photo By BSIP / UIG / Getty Images

嚥下のとき、のど仏がゴックンと上下するのがその仕組みで、ゴックンの動きなしにものを飲み込むことはできない。

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