「特別なことはする必要がないんですよ。極論、選手にとってはコーチっていなくてもいいんですから」
今季限りで日本ハムの投手コーチを退任した吉井理人氏は、コーチという仕事について、こう表現する。
横浜やヤクルト、巨人などで30年以上コーチを務めた小谷正勝氏は、その職について、
「コーチ業っていうのは、『利口はやらぬが、バカにはできない仕事』って言われる。うまく言い表した言葉だと思います。特にバカにはできない、ってところに考えさせられるものがありますよ」
と語る。プロ野球においてコーチとは、それほど「労多くして・・・・・・」な職業なのだ。
「監督とは意見が対立するところがあった。僕が邪魔になるなら辞めよう、ということです」
吉井氏の退団劇は、会見での吉井氏の発言とともに、各メディアで〈監督との確執が原因か〉と取り上げられた。
日本ハムが巨人に敗れ、日本一を逃した日本シリーズ第6戦の翌日(今月4日)、それぞれオリックス、ロッテに移籍する福良淳一ヘッドコーチ、清水雅治外野守備走塁コーチの「転職」とともに、吉井コーチの退団も発表された。
吉井氏は、'08年のコーチ就任以降、ダルビッシュ有(現レンジャーズ)をはじめ、宮西尚生、増井浩俊ら、日本ハム投手陣の育成と整備に尽力し、その指導力は他球団からも高く評価されていた。
「僕は、選手側に寄り過ぎていたのかもしれません」
吉井氏は、自身のコーチとしてのスタンスをそう言い表し、本誌の取材中、
「反省している」
と、しきりに語った。今回の「退任」は、吉井氏から申し出たものだ。
「報道にあったように、監督との間に、いわゆるケンカや確執があったわけでもありません。シーズン中、選手の使い方について、何度か意見をぶつけることがあっただけです。でも『対立』という言葉は使うんじゃなかった。野手出身の監督と僕では意見の相違があるのは当然のことですし、チームをよくするためには、議論があったほうがいいわけですからね」