田中克郎 第2回 「鹿児島の薬剤師一家に生まれるも、兄弟でただひとり弁護士を目指して中央大学法学部へ」

島地 勝彦 プロフィール

田中 シマジさんみたいな方はいまの世の中では貴重です。なかなか現代の教育からは生まれてこないタイプの人です。

立木 田中先生、シマジはほとんど"独学の人"です。小学校、中学校、高校、大学で勉強したことはほとんどなく、ただただ本ばかり読んできた男ですよ。運良く集英社が拾ってくれたから編集者になれたけど、もし集英社に落っこちて編集者になっていなかったら、いったいどうしていただろうって、おれは今でも心配しているくらいです。

シマジ 編集者になれなかったら、おれはバーテンダーになっていたろうね。

セオ そのシマジさんの夢がいまこうして叶えられたじゃないですか。

シマジ そうなんだよ。こうしてシェーカーを振って、はじめて会う人と話が出来るなんて、こんなに幸せなことはない。だからいま、おれは最後にして最高の"人生の真夏日"を味わっているんだ。

毒蛇は決して急がない

田中 今日は自分で運転してきたのが残念です。必ず近いうちにシングルモルトを飲みにここに伺います。

立木 シマジはここでお客を気持ちよく酔わせてから、自分が愛用している高価なヒゲ剃りやら資生堂メンやらスマイソンやら、果てはジャケットまで売りつけているんですよ。田中先生、今日はご自分で運転してきて大正解です。前回、三枝成彰さんなんか、50~60万円買わされてニコニコしながら帰りましたよ。

田中 それは新しい商法ですね。感心しました。

セオ ぼくも目撃しましたよ。シマジさんはここでシェーカーを振りながら、女子店員にめぼしいものを持ってこさせ、シングルモルトで気をよくしたお客さんに商品を売りつけていましたよ。

田中 たしかにここにはお洒落なものばかりありますものね。

立木 ここにある商品はすべて、シマジの膨大な浪費の果てにみつけたものばかりだということは確かだよな。アルニスの"森の番人"といわれるコートやスマイソンの手帳などはおれも欲しいと思っているけど、毒蛇は決して急がない。じっくり考えてから買おうと思っているんだ。