いじめ研究の第一人者が断言
内藤朝雄「いじめ加害者を厳罰にせよ」

 私の考えは、読書層には無視できない正解として広がったものの、世論を動かし、政策を動かす力になったとは言い難い。テレビや新聞・雑誌などのマス・メディアが、テレビ時代劇『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』のような、耳に心地よい「安心して聞くことができるお話」を語る芸能人や評論家に、マス発信を独占的に担わせ続けてきたからである。

 いじめ問題にかぎらず、現在、テレビのバラエティ番組のスタイルを原型とする「気分の言葉」で世論がつくられ、それによって、マス・メディアがつくり上げた橋下徹氏のような新しいタイプの政治家が選挙で多くの票を獲得するようになった。学校教育の構造的問題も、メディアによるバラエティ番組的な言葉の繰り返しによって、目の前にあっても見えない状態にされてしまう。

 この構造に風穴を開けようと意図して、私は新刊『いじめ加害者を厳罰にせよ』(KKベストセラーズ)を世に出した。

 まず、誰でも電車の中やぶつ切り時間で読むことができる文章で書いた。そして、メディアが「マスコミ芸人」を使って流布してきた、いじめについて世の中で信じられていることや、おきまりの人情パフォーマンスがどれほど間違っているかを、目から鱗が落ちるようなしかたで提示することにした。これをしながら、いじめの核心を簡潔に示していった。

専門家を自称するマスコミ芸人たち

 テレビや新聞・雑誌などでお馴染みの人情パフォーマンスで最悪のものは、「死なないで」「自殺はやめよう」といったメッセージである。それに対して、私は次のように書いた。

 「有名人コメントの中で最悪なのは、『死なないで』というメッセージである。(中略)いじめられてつらい思いをしている生徒は、必ずしも最初から自殺を考えているわけではない。彼らの頭の中は混乱し、様々な思念でカオスのようになっている。いわば、感情がストーリーにそった形になる前の鬱屈のごった煮のような状態だ。彼らは自分の置かれている状況をどうとらえ、どう行動していいか決められずにいる。

 ここで、選択肢と選択肢集合を分けて考えよう。世界中のあらゆる選択肢は人間の意識がとりまとめて生きるには多すぎる。そこで、(中略)状況によって半自動的に選択肢集合からある選択肢が誘導され、その選択肢の中から、『あれかこれか』を選ぶようなしくみになっている。たとえば、いじめられたときの選択肢集合U={A,B,C・・・}があるとしよう。その内実は、

A: 生きる-死ぬ
B: 警察に行く-マスコミに連絡-議員に相談-泣き寝入り
C: その他

 といったものであるとする。鬱屈のごった煮のような状態では、まだ選択肢集合の中の選択肢が意識に上らず、感情もはっきりしたストーリーによって形作られていない。感情はストーリーによって枠づけられることで、はっきりした感情として成立する。