パナソニックとシャープ本当に大丈夫なのか 決算発表で巨額の赤字を計上銀行は「そのとき」に備え始めた

かつてプラズマ、液晶テレビで市場を席捲、しのぎを削っていた両社が、ともに真っ赤っかな決算に陥った。出血が止まらない両社に、未来はあるのか。テレビの「次の稼ぎ頭」は見つけられるのか。
決算内容が事前にダダ漏れ
経営危機に直面するシャープ。その「外堀」が、ついに埋まり始めた。
「準メインバンクである三菱東京UFJ銀行が、シャープを実質的な〝要注意先〟に落とした。銀行は本店審査部にシャープ案件の特別部隊を作って対応してきたが、いよいよまずいと思ったのだろう。メインバンクのみずほコーポレート銀行も似たようなもの。みずほのある幹部は『どうしたものかと対応に悩んでいる間に、どんどんツケがたまっていく』とぼやいていた」(投資銀行幹部)
銀行は経営を監督するため、シャープに派遣する幹部の人選に入っているという。すでに担保はごっそり取っているが、進駐軍を送って常勤で監視していないと、恐ろしくてシャープ経営陣には任せられないと思っているのだろう。
シャープはこのほど、通期の最終赤字が従来予想の倍近い4500億円に陥る見通しだと発表。この8月に2500億円の赤字になると語っていたのだから、たった3ヵ月で2000億円もの巨額が吹き飛んだ形だ。
同じくパナソニックも、通期の最終損益見通しを500億円の黒字から7650億円の赤字に大幅引き下げすると発表した。携帯電話、電池など不振事業の縮小を加速する方針だ。
新たな稼ぎ頭を見つけられず、「縮み続ける」日本の電機メーカーの実態が浮きぼりになってきた。
10月31日、険しい表情で記者会見に臨んだパナソニックの津賀一宏社長は、
「デジタル家電の領域で負け組になっている」
と〝敗北〟を認めたうえで、今後は「売り上げ」から「収益重視」の経営に舵を切ると宣言。来期以降は収益が大幅改善するとされたが、マーケットはもちろん信用しなかった。
会見翌日の株式市場では午前中から売りが殺到、一時ストップ安をつけ、あっという間に37年ぶりの安値に転落した。
ただ、市場がより不信感を高めているのはシャープのほうだ。
「この短期間で2度目の下方修正ですから、舌の根も乾かぬうちにとはまさにこのこと。昨年も年度中に3回も下方修正を繰り返した〝実績〟があるから、もはや誰もシャープの言うことは信じなくなった。
そもそも今回の決算内容は事前にダダ漏れで、1週間ほど前から詳細が全国紙で報じられていた。いきなり発表するとインパクトが大きすぎてマーケットが荒れる事態を恐れ、〝憶測記事〟でアドバルーンを上げたとしか考えられない。
銀行がリークしたのか、シャープ側がしたのかわかりません。記事によって株価が暴落したら『事実無根』とシラをきればいいし、それほどマーケットが荒れなかったら本決算はそのままの数字を出せるという算段でしょう。まるで狼少年ですよ」(大手証券会社アナリスト)
赤字を一気に出し切って財務を改善、そのうえで限られた資源を「次の稼ぎ頭」に集中投下することでV字回復を目指すという方針は両社に共通している。
ただ、パナソニックの場合は白物家電、AV機器など「ベット(賭け)先」があるが、シャープは売り上げの大半を液晶事業に依存しているため、「次」が見えにくい点も懸念材料になっている。