ドラフト1位で入団しても誰もが輝けるわけではない プロ野球「戦力外通告」と「引退」「男たちがユニフォームを脱ぐ時」

フライデー プロフィール
中谷仁(33歳)捕手和歌山県出身。'97年、智弁和歌山高からドラフト1位で阪神に入団。'05年オフ、金銭トレードで楽天へ移籍。'11年オフに戦力外通告。トライアウトを経て巨人に入団。プロ通算4本塁打28安打

 捕手にとって視力は何よりも大切だ。選手生命の危機は脱したものの、以前の状態には戻らなかった。ケガが中谷を潰した---そう言われ続けた。

「それはもう自分の歴史の一部ですから。それより、ケガをしたことで周りの見方が変わったのがイヤでした。僕はキャッチャーですから相手の立場でものを考える。選手を使う側は、欠陥商品は選ばない。僕の実力を知る前に『アイツはケガしてるから』と思われているんじゃないか。そう考えて虚しくなることもありました。プロの世界は光と影の差がスゴい。眩しいところにいたかと思えば、次の日は泥まみれですから。僕はほとんど泥まみれでしたけどね」

 そう笑う中谷は来季からブルペンキャッチャーとして巨人に残り、選手たちを光の射すほうへ導く手助けをする。

 これまでの4人の男はみな甲子園出場を果たしたスタープレーヤーたちだった。それとは逆に星野真澄は、常に日陰を歩み続けた。高校ではベンチ入りすらできず、大学でもエースになれなかった。社会人、独立リーグを経て '09 年に育成ドラフト1位で巨人に入団、 '10 年春、支配下登録された。

星野真澄(28歳)投手埼玉県出身。埼玉栄高―愛知工大―バイタルネット―信濃グランセローズを経て、 '09 年、育成ドラフト1位で巨人に入団。 '10 年春に支配下登録された。プロ通算43試合1勝0敗2ホールド。 '13 年育成再契約へ

「周りの選手の印象ですか。投げ方がキレイ、球の回転が速い、変化球が驚くほど曲がる、コントロールもいい。一軍のブルペンでは隣は内海(哲也)さんだしキャッチャーは阿部さんじゃないですか。『どうなってんだここは』という感じでした。そんな中、才能がないなりに、なんとかやっていけるかなと思えたのが今年だったんです」

 星野が登録抹消されたのは6月9日。中継ぎながらプロ初勝利を挙げた5月27日からわずか13日後のことだった。

「股関節唇という軟部組織を痛めました。そこ自体には神経が通っていないので痛みがなく、『まだやれる』と放っておいたんです。すると、練習の帰りに車から降りると歩けないんです。フォーム改造に成功し、徐々に結果が出始めた矢先でした。中継ぎなので勝ち星がつくことよりも東京ドームのお立ち台に立つことが夢というか、勝手に母親と約束していたんです。それが叶った直後でしたから」

 技術だけでも、気持ちだけでも生き残れない。そんな厳しい世界に身を置いてきた5人の男は、それぞれの新しいスタートラインに立ち、前を見据えている。

「フライデー」2012年11月16日号より