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奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第3回】神から贈られた「ギフト」を持つ人間

奥村 隆 プロフィール

 そんなことを思い返しながら、僕の目はふと、画用紙の端に描かれた絵に吸い寄せられた。そう、僕自身が余白に描いた家の絵だ。その絵にも、屋根瓦だけが飛び抜けて丁寧に描かれていた・・・。

 医師が再び、息子の絵について説明を始めた。

 「息子さんが描いた屋根瓦、本当に細かいですよね。これも、あくまで絵から読み解く精神分析学上の傾向ですが、『家の屋根瓦だけを細かく描く人には、特定のものへのこだわりが強いタイプが多い』と考えられています」

 前に述べたように、息子は歴代横綱の通算勝敗数や生年月日を覚えてしまうなど、特定のものへのこだわりが強いのは間違いない。僕は頷くしかなかった。

 そして医師は最後に、息子が描いた木の絵を手に取って言った。

 

 「この絵は素晴らしい。芸術的なセンスに溢れています。本当に才能豊かなお子さんだと思います」

 木の絵については誉められただけで、問題点は別に指摘されなかった。しかし、子供の絵と家の絵の「気になる点」を聞かされた時点で、息子がASDであるのは間違いないような気がしていた。僕は「息子がASDと診断される覚悟をしておこう」と心に決めた。

非常に恵まれた才能を持っている

 医師は顎に手をやってしばらく何かを考えていた。言いにくいことをどう言うか、言葉を選んでいるのかもしれなかった。やがて医師はこちらを向くと、変わらぬ穏やかな口調で意外なことを話し始めた。

 「息子さんのIQを調べたところ、140以上ありました。その事実に加え、木の絵の見事さを鑑みると、息子さんは非常に恵まれた才能を持っていると言えます。

 同時に、他の二枚の絵や、お父さんが指摘した日々の行動を考えると、アスペルガー症候群の可能性も否定できません。ただ息子さんは、日常生活で他人に迷惑をかけている訳ではありませんし、自閉症のように内向きになっている訳でもないので、今は気にしなくて結構です」

 そうか、息子は発達障害の可能性があるのか・・・。しかし、事前に覚悟していたせいか、そう聞かされても動揺はなかった。