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奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第3回】神から贈られた「ギフト」を持つ人間

奥村 隆 プロフィール

 では、耳を描かないことがなぜ問題なのか? そう訝しんでいたら、医師はあたかも僕の心を読み取ったように、聞き捨てならないことを説明し始めた。

 「耳を描かない人には『人の話を聞かないタイプ』が多いんです。これは、あくまで絵から読み取れる精神分析学上の傾向で、すべてのケースに当てはまるわけではありませんが・・・。息子さんもお父さんも、そういうタイプですか?」

 僕はもう唸ることもできず、ただ唖然とする他はなかった。医師は正しい。確かに僕は「人の話を聞いていない」タイプの人間だからだ。いろいろな人から指摘されているし、自分でもそう思う。

 

 誰かと会話をしていて、相手の発言の中に自分が話したいことを見つけると、会話の流れがどうであれ、すぐに自分の話を始めずにはいられない性格なのだ。その結果、相手の発言を遮ってしまうこともしばしばある。

 もちろん理屈では、会話の相手の発言を遮ってあれこれ話し始めることがよくないというのはわかっている。しかし、実際にそういう場面になると、自分をコントロールできなくなる。自動的に口が動いてしまうのだ。

 そんな僕の性格をたった一枚の絵で言い当ててしまうとは、この医師はただ者ではない。まるで名探偵のようだと僕は舌を巻いた。でも、医師の話は、それからが本番だった。

「屋根瓦の絵」が語るもの

 次に医師が示したのは、息子が描いた家の絵だった。屋根瓦が一枚一枚、丁寧に描き込まれている。

 「息子さんの屋根瓦の描き方が丁寧すぎるんです。実際の家を見ずに、頭の中で想像して家を描くとき、普通の子供は屋根瓦を何十枚も丁寧に描けないものですよ。そもそも面倒で描かないということもあります」

 その言葉を聞いて、僕はハッとした。息子の授業参観に行ったとき、子供たちが描いた魚の絵が学校の廊下に貼られていたことを思い出したのだ。

 息子が描いた魚は、数十枚の鱗が一枚一枚細かく描写されていて、生きているようなリアルさだった。その絵を見た僕は、「息子は絵がうまいな」と無邪気に喜んだのだが、あれも問題だったのだろうか?