長谷川幸洋
第2回 「ニュースの思考法」
生資料こそが宝の山!
公開資料の徹底分析が復興予算流用問題を暴いた!

ジャーナリストも国会議員も元データをチェックしていない

 復興予算の流用問題を『週刊ポスト』でスクープした福場ひとみ記者の話を続けよう。第1回は福場がインターネットで復興予算について検索し、そこで得た情報を基に霞が関の役所を取材した経緯を紹介した。福場はどう取材したのか。

 福場が手がかりにした「東日本大震災復興特別会計歳入歳出予定額各目明細書」は全部で194ページもある大部の資料だ。それを眺めているうちに、福場はあることに気がついた。

 あきらかに復興とは関係ないと思われる項目がいくつもあったのだ。たとえば大学である。東日本大震災復興教育研究経費などと、いかにも復興に関係ありそうな名目の支出に混じって施設整備費というのがある。これはいったい何か。

 それも被災地の大学ではない。北海道から九州、沖縄まで日本全国の国立大学法人がずらりとぜんぶ出てくる。たとえば室蘭工業大学の施設整備費や教育研究経費が復興と何の関係があるのか。福場はそんな疑問を抱いて、旧知だった桜内文城衆院議員(当時はみんなの党、現在は日本維新の会)に「5分でいいから時間をください」と取材を申し込んで率直に疑問をぶつけてみた。

 すると、資料をすでに見ていた桜内は言った。

「そうなんだよ。その通り復興に関係ないと思うけど、ジャーナリストどころか国会議員もだれもチェックしてないんだよ。どう思う、これひどいでしょ」

 桜内の話を聞いて、福場は「これはおかしい」と疑念を深めた。

もう一つ、執行率の問題もあった。執行率とは予算をどれくらい実際に使ったか、という指標である。ネットで入手した資料をみると、復興庁の予算執行率がゼロ%とか16%とか、あきらかに低いと思える数字が並んでいた。

「なんでこんなに低いの?」

 福場が執行率の低さにも疑問を抱いたのは、ちょうど1年ほど前に別の取材をしていた同僚記者の1人が「霞が関の役所は復興を大義名分にして予算を獲得しているらしいぜ」という話を聞いていたからだ。福場自身の取材でも、厚生労働省との関係が深い特定のクリーニング業界団体だけが国の補助金を受けている実態があった。

 このクリーニング業界問題について、福場は『週刊ポスト』の2012年4月13日号で「ついにシロアリ官僚が『復興予算』を食い始めた」というタイトルでいち早く報じている。同年8月10日号で復興予算の流用問題を初めて報じる前だった。

 ほかにもネットで入手した資料を当たっていくと、たとえば復興特別会計の予算が「沖縄道路整備事業費社会資本整備事業特別会計へ繰入、21億9000万円」などとあきらかにおかしい資金の出し入れがあった。これは後に沖縄の道路整備に化けていたと判明した分である。

 そんな背景があって、福場は「これは裏に相当なカラクリがある」と直感した。

「やっぱり、この各目明細書はすごい資料なんだ。『これで記事が書けたら、1年かけても悔いはない』と1人で盛り上がっちゃって(笑)」

 紙面を企画する編集者に相談すると

「よし、役所に問題の予算をぶつけて言い訳を聞こう。それで矛盾を突いていけばいい」

 とゴーサインが出た。・・・・・・(以下略)

メルマガ『現代ビジネスブレイブ」より

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