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奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第2回】フォトグラフィックメモリーの持ち主

奥村 隆 プロフィール

 そんなふうに、僕は感じたままの感想を再び口にした。すると医師は「お父さんも、同じように描きますか?」と尋ねてくるではないか。その質問がどんな意味を持つのか、深く考えることもなく、僕は「そうですね」と応じ、また端のスペースに家を描いてみせた。

 屋根を描くのに少し時間がかかったものの、とりたてて特徴のない絵のはずだった。ところが医師は、「ほほう・・・」と唸りながらそれを凝視している。さっき僕が「子供」を描いた絵と同じく、あまりにも下手なのでびっくりしているに違いない。

 最後は「木」の絵だった。画用紙の真ん中を太い幹が貫き、紙の両端に向かう2本の線だけで、枝と葉を表現している。

 僕にはとても描けない芸術的なセンスのある絵だ。そう感想を述べると、医師は「そうですね」と頷いた。

 

僕を心底むっとさせた言葉

 それにしても、いつまでたっても「息子の絵で気になる点」が明かされない。僕は思いきって尋ねてみた。

 「先生は、息子の絵のどこが気になるというのですか?」

 「いや、別にどこが問題という訳ではないんですが・・・」

 医師は言いよどむと、「ちょっと伺ってよろしいですか」と再び僕に質問してきた。

 「問診票によれば、息子さんは、対人関係を構築するのが不得手で、予測できないことへの対応も苦手ということでしたが、逆に、何か得意なことはありませんか」

 そうか。言われてみると、僕は問診票に、息子について心配な点ばかりを書いて、長所を書き忘れていた。

 「息子は数に対する興味が強くて、算数が得意です。また、数字に関係する記憶は良いですね。大相撲なら、歴代横綱の生年月日と通算の勝敗表を言えるほどです」

 それを聞いた医師が「はぁ~、それは凄い記憶力ですね」と感心したような声を上げた。