「中田の4番」も「斎藤の開幕投手」も「パ・リーグ優勝」もすべて計算ずくだった「日本ハムモデル」勝てる組織はこう作る

週刊現代 プロフィール

 野球関係者にはよく知られているが、この「軸」を支えているのが、選手の能力を多角的に数値化する、「ベースボール・オペレーション・システム(通称BOS)」だ。

 日本でもベストセラーとなった『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著、ランダムハウス講談社刊)で描かれた、「安打より出塁を重視」「盗塁・犠打は評価しない」などの、全く新しい選手の査定基準を参考に、'05年、約1億円の予算を投じて構築された。

「選手の能力を数値化し、『見える』ようにしたことで、今後どんな選手が必要か、今いる選手ではどの能力を伸ばすべきかなど、編成から育成、補強に至るまで、チーム作りの指針を一本化することができた」(藤井氏)

 当時球団社長だった藤井氏や、現チーム統括本部長の吉村浩氏が中心になり作られた「BOS」は、'06年、'07年とチームを史上初のリーグ2連覇に導くなどの成果を上げ、今ではロッテや巨人など、「真似をしている」(藤井氏)チームも増えてきた。しかし、

「BOSによるデータ解析がすべての基準になるので、監督にも、ある意味オーナーにも人事権は全くない。現状で日本ハムほど、このシステムを徹底しているチームは他にはないでしょう」(スポーツライター)

 という指摘もあるように、日本ハム式のチーム作りは、様々なしがらみを抱えた他の球団では、簡単には移植できないほど洗練されている。

奇策にも意図がある

 事実今季も、日本ハム以外では考えられないような出来事が多く見受けられた。
例えば開幕戦、斎藤佑樹の開幕投手と並んで、栗山監督が仕込んだサプライズが、「2番・稲葉篤紀」だった。しかし、この「奇策」はわずか6試合で、フロントから止められてしまった。

「打率を見ると、『2番・稲葉』は3割4分8厘と当たっている。単純な成績だけ見れば成功に思えるでしょう。だがチームは3勝3敗だった。戦犯は稲葉ではなく、開幕から6試合で1安打の中田翔と5番・スレッジの不振にあることは明らかでした。でも配置換えされたのは稲葉。ポイントゲッターの彼を5番に置いたほうがいいと、フロントがデータを根拠に、監督に修正を促したんです」(球団関係者)

 たとえ田中賢介や稲葉、糸井嘉男という1~3番が3割以上の打率を残しても、クリーンナップが打てなくてはなかなか得点に結びつかない。ところが実際に、7戦目となるロッテ戦から稲葉を5番に変えると、同カードを3戦全勝。以降20試合で14勝5敗1分と大きく勝ち越し、チームはリーグ単独トップに躍り出る。

 特に稲葉は、3月・4月の月間MVPに選ばれる活躍をみせ、栗山監督がこだわった「4番・中田」の大不振(前半戦打率2割2厘)を見事にカバー。稲葉はその後も主に5番に座り、シーズンを通してMVP級の働きをみせた。

 この件で特筆すべきは、フロントの対応の早さだ。