『証言 民主党政権』 著:薬師寺克行
「世論調査政治」の落とし穴

 こうした手順を見ると六〇年余りを経て、新聞社の世論調査が全く違うものになっていることが分かる。一九四六年の調査は内閣発足から一ヵ月余りの時間を経ているため、その間、首相はじめ新閣僚の言動について報道され、回答者はそれを踏まえて評価を下すことが可能だ。

 それに対して内閣改造の瞬間から実施される今日の調査は、回答者の何を引き出すことができるだろうか。新閣僚らはまだ何も発信していない。さらに多少は回答者が考える余裕を持ちやすい面接調査ではなく、即答を求められる電話調査である。大半の回答者は突然かかってきた電話に驚き、十分な判断材料のないまま直近に得た情報や目にした映像などに頼って反射的に「支持する」「しない」を回答しているだろう。

 ところが、その回答の集合体が「内閣支持率」という数字として報じられ、政治的な力を持ってしまう。首相や政党幹部は数字に一喜一憂するとともに、より高い支持を得るため精力を注ぐ。それが現代政治の特徴のひとつになっている。

 私はこのほど、菅直人、岡田克也、前原誠司ら民主党政権で首相や閣僚など主要なポストを担った八人の方々に、民主党政権誕生に至る過程や実際の政権運営などについて語っていただき、『証言 民主党政権』というタイトルの本にまとめた。長時間にわたる膨大な証言をもとに民主党のたどってきた道を検証すると、一九九六年に結党して以来、大きく変質してきたことが分かった。

 わずか五二人で発足した民主党の問題意識は当初から、自民党が築き上げてきた統治システムの否定にあった。自民党の長期単独政権を可能にしてきた「政官業の鉄のトライアングル」はすでに耐用年数を超えてしまったばかりか、腐敗の温床になっているとみなし、自民党的統治システムに代わる制度の設計に取り組んだ。それが「政治主導」や「内閣と党の一元化」などの構想に収斂していった。

 しかし、国政選挙のたびに議席を増やし、自民党に対抗する政党に育っていくにつれ、民主党から当初の純粋さが薄れ、政策や幹部の言動に選挙目当ての要素が目立つようになってきた。消費税増税を否定し、財源のあてもないまま子ども手当を大幅に増額するなど、国民に受けのいい政策を前面に出すようになった。

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