『証言 民主党政権』 著:薬師寺克行
「世論調査政治」の落とし穴

 朝日新聞の世論調査がいつ実施されたかだが、記事には「七月一日現在を期し、東京、大阪、西部三本社協力の下に二十万票の調査票を配布して」と書かれているだけで、必ずしも調査期間は明確ではない。はっきりしているのは吉田内閣の発足が五月二二日で、朝日新聞の世論調査は七月一日以降に実施され、紙面化されたのは八月五日であるということ。つまり内閣発足から調査までは一ヵ月余り、紙面化までは二ヵ月以上もかけている。

 世論調査を実施するにあたって、調査対象者が吉田内閣を評価するための十分な情報と時間を得ることを重視していたようだ。

 さて、昨今の世論調査だが、ずいぶん様変わりした。民間組織の「Real Politics Japan」によると、二〇一〇年の一年間に国内の主要な新聞社、テレビ局が実施した内閣支持率調査は合計で二三三回だそうである。この年は鳩山内閣から菅内閣への首相の交代や参院選挙、内閣改造など政治的に大きな出来事が相次いだこともあるだろうが、単純計算すれば一・五日に一回の割合で内閣支持率調査が行われたことになる。

 マスコミによる最近の世論調査は電話調査が中心となっている。かつて主流だった面接調査に比べるとかかる費用は圧倒的に少なく、準備などに必要な時間も短くてすむ。調査が極めて簡便なものになったため各社が世論調査の早さを競う時代となった。

 例として二〇一二年六月四日の野田内閣改造についての世論調査を紹介しよう。この日、野田首相は午後一時半ころ記者会見して内閣改造の理由などを説明し、午後一時五〇分から閣僚を呼び込んだ。皇居での認証式は午後五時、初閣議は午後八時四〇分ころだった。これを受けて朝日新聞は野田改造内閣についての「全国緊急世論調査(電話)」を実施した。調査期日は六月四日と五日の両日。記事は六月六日の朝刊に掲載された。

 この調査は内閣改造が行われた六月四日に開始しているから、少なくとも新閣僚の顔ぶれが公表された後にスタートしたのだろう。翌日も調査が実施されているが、六月六日の朝に配達される新聞に記事を掲載するためには、前日の六月五日の夜、比較的早い時間に調査を終了しなければ集計や記事の作成が間に合わない。つまり新閣僚の公表とともにヨーイドンで調査を開始し、約一日かけて一気に回答を集めているのだ。

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