戦後間もない一九四六年八月五日付の朝日新聞に世論調査の記事が掲載されている。質問は「吉田内閣を支持しますか」と「もし近く総選挙があるとすればどの政党を支持しますか」のわずか二問だった。今で言う「内閣支持率調査」と「政党支持率調査」である。
二十一歳以上の男女を対象に、全国で二十万枚を配布し十二万七千四百三十六票を回収した、とある。各地の人口や年齢、職業が人口比に合うよう配布したが、「ちやうど農繁期にあたつてゐたため」都市部と青壮年層の回収比率が高かったというあたりは、当時の空気が出ていて面白い。
特筆すべきは記事の以下の部分である。
「今回の調査は去る四月幣原内閣総辞職後の長い政局の昏迷期をへて五月吉田内閣が成立し、七月に入つて議会も開かれ、現内閣の性格が一応明かとなつた七月一日現在の政情を条件としたもの」
当時を振り返ると、幣原内閣のもと一九四六年四月一〇日に戦後初の総選挙が実施され、鳩山一郎氏が党首の自由党が一四一議席を得て第一党となった。こうなると幣原が総辞職し鳩山が後継首相に就任するのが筋だが、事はすんなりとはいかなかった。
GHQは幣原内閣の継続を望んだが国内から強い反発が出たため、幣原は四月二二日に総辞職した。当然、第一党党首の鳩山が首相になるはずだが、GHQは保守派の鳩山を徹底して嫌っており、形式的な問題を理由に五月四日、鳩山を公職追放にしてしまった。占領下とはいえずいぶん露骨な介入である。結局、五月二二日に第一次吉田内閣が誕生した。記事中の「長い政局の昏迷期」とはこうした一連の経過を指していると思われる。