『アメリカを動かす思想』 著者:小川仁志
閉塞感を打ち砕く
「プラグマティズム」という道具

 とりわけ私が提唱したいのは、政治でも経済でも個人の人生でも、とにかくイノベーションをもたらすことである。閉塞感を打ち砕き、イノベーションをもたらすことで、社会も個人も変わることができると思うからである。そのための道具として、プラグマティズムを用いてもらいたいのである。

 もっとも、プラグマティズムそのものは、先ほど「知識のあくなき実践」と定義したように、単に知識を実践し、うまくいく方法を探る思考法に過ぎない。したがって、必ずしもイノベーションを目指したものではないのである。

 イノベーションはあくまで、たまたま生じる副産物に過ぎない。だから毎回イノベーションが生まれるわけではないのだ。イノベーションが世の中を刷新するほど画期的なものである限り、そうした画期的なものを求める態度が要求されることはいうまでもない。

 とするならば、プラグマティズムをそのまま用いていてはいけない。むしろイノベーションを積極的な目的に据えた「イノベーション・プラグマティズム」ともいうべき新たな思想が求められるのである。

(おがわ・ひとし 徳山工業高等専門学校准教授、政治哲学)



◆ 内容紹介
アメリカ人にとっては、ふだんは、ほとんど意識すらされない彼らの血肉となっている思想、それがプラグマティズムである。実際に「プラグマティズム=知識のあくなき実践」はアメリカ社会において、ありとあらゆる局面で見られる。その結果、失敗も多くあれど、たゆまなくイノベーションが繰り返され、社会に大きなダイナミズムが生まれているのもまた事実である。本書では、プラグマティズムの起源と発展の歴史を辿るとともに、自由、民主主義、資本主義といったアメリカを代表する思想もまた、プラグマティズムがその土台となっていることを確認する。そしてさらにプラグマティズムの考え方を輸入することで、「動けなくなっている日本」に風穴をあけることを説く。アメリカを動かしているプラグマティズムを知る格好の入門書。
 
小川仁志(おがわひとし)
1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。哲学者・徳山工業高等専門学校准教授。米プリンストン大学客員研究員(2011年度)。商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践して いる。専門は欧米の政治哲学。著書に『はじめての政治哲学―「正しさ」をめぐる23の問い』(講談社現代新書)、『日本の問題を哲学で解決する12章』(星海社新書)等多数。