[プロ野球]
田口壮×二宮清純<前編>「イチローのレーザービーム、ここがすごい!」

ワールドシリーズ、日本シリーズ特別対談
スポーツコミュニケーションズ

メジャーの外野手は打撃重視

二宮: 日米の外野守備の違いで指摘されるのが、日本は人工芝の球場が主流で思い切って打球に飛び込めないこと。メジャーは天然芝がほとんどだから、ケガの心配なくスライディングキャッチやダイビングキャッチができます。
田口: もちろん天然芝のほうがプレーしやすいですね。人工芝の球場だとヒザにサポーターをつけて、ヒジのまわりにリストバントを巻いて守る選手が多い。夏でも長袖のアンダーシャツを着たりしてケガを予防しています。それに日本の場合はドーム球場が多いから、打球が風の影響を受けることがない。日本の環境に慣れてしまうと、メジャーの球場で守るのは苦労しますね。

二宮: メジャーの外野手は肩が良くて守備範囲も広い半面、お世辞にもうまいとは言えない選手も多い。イチローや田口さんに代表されるように、日本の外野手のトップクラスは十分、メジャーでも守りで通用することを証明しています。
田口: 基本的にアメリカは外野の守備を練習しない選手が多いですからね(笑)。外野手はバッティングが第一という考えです。守備練習と言っても試合前のバッティング練習中に少しフライを追いかけるくらい。

二宮: 日本だとキャンプ中に特守をしたり、中継プレーの確認をしたり、いろいろやりますが、メジャーではあまりないと?
田口: 確認程度で終了ですね。それも毎日はやらない。だから上手な選手と下手な選手がはっきり分かれます。メジャーの外野手の感覚として、レフト線や左中間に抜けたら二塁打、右中間に抜けたら三塁打と決めつけているように思えるんです。少しでも先の塁に進ませたくないという意識は薄い……。ちょっと頑張ったら、一塁で止められるんじゃないかと思うような打球でも、打ったバッターをリスペクトして二塁への進塁を認めている気さえします。「二塁までは OK。だけど、三塁までは行くなよ」と……。

二宮: それについてベンチから注意されることはないんですか?
田口: ないですね。たぶん言ってもやらないでしょう。フェンスの跳ね返りもよくないので抜かれてしまうと一塁で止めるのは難しい。だから、最初から諦めているような感じです。でも、その前にポジショニングを工夫すれば打球を抜かせないようにするのは不可能ではない。僕はそういう意識で常に守っていましたし、それで相手を一塁でストップさせたことが何度もありました。だからこそ、メジャーでも生き残れたのかなと感じています。

(後編につづく)

田口壮(たぐち・そう)プロフィール>
1969年7月2日、兵庫県生まれ。西宮北高を経て関西学院大へ。関西学生リーグでは通算123安打のリーグ記録を樹立し、92年にドラフト1位で内野手としてオリックスへ入団。3年目から外野手に転向し、95年のリーグ優勝、96年の日本一に貢献。00年のシドニー五輪では日本代表として出場する。01年オフにFA宣言してメジャーリーグに挑戦。カージナルスで徐々に実力を認められ、チームに定着。06年にはポストシーズンでも活躍し、ワールドシリーズ制覇を経験する。08年に移籍したフィリーズでは自身2度目の世界一に輝く。その後、カブスを経て10年に古巣オリックスへ復帰。11年オフに戦力外通告を受け、現役続行を目指していたが、この9月に引退を表明した。日米通算1894試合、1601安打、89本塁打、592打点、126盗塁、打率.277。日本ではベストナイン1回、ゴールデングラブ賞5回。

(構成:石田洋之)