かつて、藤浪晋太郎や大谷翔平とそっくりなドラフト1位の選手がいたしかし、彼らは残念ながらプロで成功しなかった
身長190cm、最高球速150km。甲子園で優勝し打撃も一流---今秋ドラフトの目玉は、高スペックの高校生だ。しかし以前にも、彼らによく似たドラ1がいた。彼らはなぜ、成功しなかったのか。
今月4日、すでに藤浪晋太郎(大阪桐蔭)の1位指名を「公言」しているオリックスが、9人の選手へ「戦力外通告」を行った。驚くべきことに、そのうち実に4人が「元ドラ1」だった。
彼らにつきつけられた現実は、「球界のエース」を期待される藤浪や、最速160kmの怪物・大谷翔平(花巻東)にも十分に起こりうる、もう一つの未来だ。
今月25日に開かれるドラフト会議で、藤浪には複数球団からの1位指名がすでに「約束」されている。ただし、それは決して藤浪がプロ野球で成功することの約束手形ではない。
ヤクルトの元スカウト部長・片岡宏雄氏は、長年のスカウト生活で、一つだけ理解したことがあるという。
「ドラフト1位というのは、才能があるはずの選手。でも、花ひらくかどうかまでは、30年スカウトやっても見抜けない。とどのつまり、活躍するなんて絶対の確証は、持てないんです」
ドラフト会議。そこで生まれる12人の「ドラ1」の未来。その分岐点を探るヒントは、先輩ドラ1たちの経験の中に潜む。
「藤浪を見ると、アイツのことを思い出すんです」
あるスポーツ紙のベテラン記者は、ひとりの「超高校級」右腕の名前を挙げた。
谷口功一。身長191cm、最速151kmの直球を武器に、天理高2年の夏、甲子園を制覇。'91年のドラフト1位で巨人に入団した谷口氏の球歴は、確かに藤浪のそれと酷似している。
「プロのカベを感じたことは一度もなかったです。1年目の二軍戦では、1試合で10本くらい相手のバットを折ったこともありました。特に低めのコントロールは、藤浪くんよりも間違いなく良かったですよ」
本誌の取材に対し、入団当時を振り返る谷口氏の言葉は強気だ。だが、彼はプロで結果を残せなかった。通算8年間で、巨人、西武、近鉄と3球団を渡り歩いたが、一軍では1勝も挙げることができなかったのだ。
「期待度の高さは、ドラフトで1位指名された時よりも、入団してから、よりヒシヒシと感じるようになりました。与えられるチャンスの数も、他の同期と比べて格段に多かった」