[ボクシング]
杉浦大介「西岡利晃を一蹴したドネアが歩むスター街道」

スポーツコミュニケーションズ

軽量級史に残るボクサーへ

 こうして久々に会心のパフォーマンスで4戦ぶりのKO勝利を飾り、ドネアの今後がさらに楽しみになってきた。これまでのキャリアを見る限り、基本的にこの選手にリング上でできないことはないようである。西岡戦のようにスピードと手数を生かした戦いを続ける限り、格下に不覚を取ることは考えづらいし(相手次第で再び油断して大振りになることはあり得るが)、豪快KOもまた披露できるだろう。

 次の標的としては、メキシコのケンカ屋、ホルヘ・アルセとの対戦が年内にも噂される。このアルセ戦、あるいは所属プロモーターの垣根を越えたアブナー・マレス戦(ドネアのトップランク社とマレスが所属するゴールデンボーイ・プロモーションズは犬猿の仲)が実現しても、それほど手間取ることもなくドネアが勝利を飾るはず。そうなると、ライバルとして特筆すべきは、Sバンタム級ではWBA王者のギジェルモ・リゴンドー、フェザー級では元王者のユーリオルキス・ガンボアといったキューバ勢となるだろうか。

 リゴンドー、ガンボアともにトップランク所属だけに本来ならマッチメイクは容易なはずだが、どちらも米国内にファンベースがなく、興行的には実は難しい。アマ時代は伝説的存在だったリゴンドーも、プロではまだ強豪との対戦経験に乏しく、ドネア本人も「彼はもっと僕をエキサイトさせる必要がある」と当面の直接対決には消極的。ガンボアもすでにスーパーフェザー級で試合をこなしているだけに、階級に差があるドネアとの“頂上対決”があるとしても、しばらく先のことになりそうである。

 こう見ていくと、魅力的な対戦相手の選択肢が限られているのが残念なところ。ただ、それでもドネアはどんな選手と戦わせても観る価値のある貴重な軽量級選手であることは確かだし、西岡戦でその魅力が再認識された感もある。

スター候補となっても謙虚な態度に変化はない。

 確かな実力、明るい笑顔、礼儀正しい性格を備え、9歳で米国移住しただけに英語でのスピーチも完璧……さまざまな要素から考え、アメリカのリングで“真のスーパースター”と呼べる位置にたどり着けるポテンシャルがある軽量級ボクサーはドネア以外に存在しない。同国の先輩マニー・パッキャオのようにウェルター級戦線まで参入することは非現実的としても、近い将来にライト級あたりまで席巻していっても特に驚くべきではない。

 西岡を一蹴することで、日本でも知名度を上げたであろう小さな天才ボクサーの未来に注目が集まる。このまま期待通りにドネアが上昇していったとしたら、10月13日のハイライトも頻繁に流され続けるはず。そのときには、ドネア対西岡戦は“日本ボクシング界に刻まれる一戦”にとどまらず、“軽量級史に残るボクサーのキャリアにとっての重要な1ページ”にもなっていくのだろう。

※Photo by Kotaro Ohashi

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
1975年、東京都出身。大学卒業と同時に渡米し、フリーライターに。体当たりの取材と「優しくわかりやすい文章」がモットー。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシング等を題材に執筆活動中。
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