テレビ界における今年の年間視聴率争いは、テレビ朝日が話題の中心だったが、3冠王の達成については雲行きがあやしくなってきた。約30年間も年間3冠王を争い続けてきた日本テレビ、フジテレビの壁はやはり厚い。テレ朝は4月から6月の四半期3冠王を得たが、7月から9月の四半期は日テレが取った。
では年間を通した視聴率はどうなのだろう。1月から9月までの3局の視聴率は以下の通りだ(ビデオリサーチ調べのデータに基づく)。
昨年の年間3冠王である日テレの幹部は「少なくとも視聴率全体の指標である全日帯をテレ朝に奪われることはないはずだ」と胸を張る。実際、日テレは午前、午後のワイドショーが強く、0.5%差を残り3ヵ月で逆転するのは相当難しいだろう。
日テレは9月までの時点でゴールデン帯も制しており、テレ朝に奪われているプライム帯も差は僅か0.1%。この差を埋めるための戦略も着々と進めている。
まずテレ朝の金看板である『報道ステーション』(月~金曜午後9:54)と重なる『金曜ロードSHOW!』(金曜午後9時)では、日テレが中心となって製作したヒット映画『20世紀少年』の特別編を10月12日から3週連続で放送している。11月以降も切り札であるスタジオジブリのアニメを惜しげなく放送するという。テレビの映画枠が振るわなくなって久しいが、ジブリ作品は別格だ。
日テレの『報ステ』対策はこれにとどまらず、午後9時台で好評の1時間のバラエティーを随時、拡大して11時までの2時間枠とする。日テレは『11PM』(1961年)、『ゲバゲバ60分』(69年)、『24時間テレビ』(78年)などを作り上げた伝説の制作者・井原高忠氏の時代から、一貫してバラエティーが強い。現在も『ザ!鉄腕DASH!』『世界の果てまでイッテQ!』など複数のバラエティーが15%以上の視聴率を稼ぐ。また、視聴率争いがホームストレッチに入る年末には大掛かりな企画があるという。日テレ社員は「まだ社外秘です」と、ささやいた。
では、なぜ4月から6月はテレ朝の後塵を拝したのか。
日テレが得意としてきたバラエティーで、テレ朝が『お試しかっ!』など斬新な番組を創出したことが一因だろう。レストランなどの協力を得て、出演陣が人気メニューを当てる。「これは『やられた』と思った」(日テレ幹部)。盲点だった。
あるテレ朝幹部は「うちの若手制作陣はタレントと付き合うより、こういう企画を考える方か得意みたい」と上機嫌で語っている。日テレは井原氏以来、芸能プロダクションとの緊密な関係を売り物にしてきたが、それだけにレストランのメニューを核に据える番組など想定外だったのだろう。