プロ野球深層レポート これが「野村克也ノート」の核心だ
巨人の橋上秀樹コーチ、日ハムの栗山英樹監督、ヤクルトの小川淳司監督みんなあの人の教えを受けていた

週刊現代 プロフィール

 その言葉で、阿部は覚醒。橋上コーチのデータ活用術を、急速に自分のものにしていく。リーグ優勝を決めた翌日のスポーツ報知の手記に、阿部はこう記した。

〈ストライクを見逃す勇気を持てるようになった。(中略)これまでだったら、三振をしたくないから振りにいっていた。でも「三振をしてもいいんだな」って思えるようになり、余裕が生まれた〉

重要なことは「準備」です

 阿部は10月4日現在(以下数字はすべて同)、打率3割4分3厘と100打点でリーグ2冠王、本塁打も27本で2位。さらに昨季114試合出場(437打席)で66個だった三振数は、今季は136試合に出場(548打席)しながら、わずか46個。逆に、四球は69個と自己記録を更新中だ。このまま四球数が三振数を上回れば、キャリア初だ。

 それにしても、「三振OK」を指示されながら阿部の三振数はなぜ減ったのか。

「僕らがノムさんから学んだID野球というのは、確率と根拠の上に成り立っている。つまり、『この投手は、カウント2-1からは、100%カーブ。だからカーブを狙え』と。投手それぞれに、カウントによって『投球のクセ』がある。開幕直後までの阿部は、直球を狙いすぎて、変化球に空振りしてしまうタイプの打者だった。それが目に見えて減った。橋上は、対戦投手ごとに狙い球を、阿部に的確に指示を出した。それが当たる、数字に出る。その結果、信頼を得た」(元ヤクルト一軍打撃コーチ・杉村繁氏)

 阿部が成果を挙げたことで、坂本や長野も橋上コーチの助言を積極的に取り入れ始め、それぞれ3割を超える成績を残している。

 橋上コーチが、今季巨人に持ち込んだのは、「野球の考え方」。それはつまり、データを的確に読み解き、効率良く自分の準備に応用していくこと。大切なのは、打席に入るギリギリまで、「このカウントなら100%コレが来る」というところまで状況に応じて必要なパターンを用意することだ。

「100%の準備をすれば、三振は減るし、自信満々に見逃しできる。そこまでいくと、結果が見逃し三振でも、次の打席のヒントになる」(前出・杉村氏)

 一方、今季のパ・リーグは、就任1年目の栗山英樹監督が率いる日本ハムファイターズが優勝を果たした。

 新米監督が、周囲にその手腕を印象づけたのは、敗戦に終わった5月1日のソフトバンク戦だった。スタメンに抜擢された岩舘学が、なんと3回裏に同点のソロホームラン。しかし驚いたのは、栗山監督が、岩舘にスタメンを言い渡したタイミングだった。それは1週間前。相手の先発が発表されるずっと前だ。

「7日後の先発を山田大樹と読んだ監督は、山田を得意にしていた岩舘に、『準備しておけ』と話したんです。岩舘は、『1週間、必死になって攻略法を考えた』そうだ」(全国紙デスク)

 栗山監督は口うるさく、

「結果のために、準備を」