美魔女をブームにした「カリスマ編集長」の新連載【第1回】 欲望を知らずにブルーオーシャンは見つけられない
はじめまして、「愛と欲望のマーケッター」・山本由樹です。
まずは簡単な自己紹介から。私は今年の7月まで女性月刊誌『STORY』や『美ST』の編集長を合計7年間勤めていました。ファッションやビューティーの情報を扱うのが主な仕事でしたから、「現代ビジネス」のビジネスパーソンたちとはちょっと違う世界で生きてきました。読者は女性たちですし、スタッフや関係者の多くも女性たちという、常に女性に囲まれた環境です。ちょっとうらやましいでしょ?
その環境でいつも考えていたのは、彼女たちの「言えない欲望」を知ること。その「欲望」を知ることができれば、まだ手つかずの「ブルーオーシャン」を見つけられるとずっと考えていました。
「美魔女」っていう言葉を聞いたことありますか? ない人は自分の情報感度を疑ってみた方がいいですよ。
私が『美ST』の編集長時代に生み出した言葉で、「年齢を超越した若さと美しさを持ったミドルエイジの女性たち」のことを言います。まるで「魔法」を使ってるとしか思えないほど美しいので「美魔女」。2010年に「第1回国民的美魔女コンテスト」を開催以来、「美魔女ブーム」を巻き起こして、今や「美魔女」という言葉は一般名詞として流通しています。
どのくらいのブームなのかって? 例えば、ここに「国民的美魔女コンテスト」のメディアでの反響を広告費に換算したデータ(インテグレート試算)があります。
●第1回国民的美魔女コンテスト: 22億円
●第2回国民的美魔女コンテスト: 67億円
たった1千万円くらいのイベントでこの反響は、ちょっとビックリじゃないですか?
コンテストの様子はUSTREAMでもライブ配信されたんですが、ここへのアクセスはわずか1週間足らずで100万視聴超え! 即座にUSTREAMから電話がかかってきて、「このコンテンツをずっとアーカイブして欲しい」と依頼があったほどです。
よく知られたアーティストのライブ配信でも、数千~数万視聴程度しかいかないのでUSTREAMもビックリの大反響だったわけです。
ではなぜ「美魔女」はブームになれたのか? その秘密は彼女たちの抱えた深い悩みを私が知ったからなのです。
セックスレスという共通の悩み
「夫とは10年間セックスしていません」---ある43歳の主婦の言葉です。
『STORY』の編集長をしているときでした。雑誌の企画で「セックスレス」について、100名の読者に対面調査をしたことがあります。
その結果分かったのは、7割の妻たちは「セックスレス」に悩んでいるという驚くべき事実でした。ファッションやビューティーにいくらがんばって若く美しくあり続ける努力をしていても、いちばん身近な異性からは女としてみられないという悩み。これってけっこう深刻です。
40代の女性は更年期に差し掛かる年齢でもあります。女としてはあと10年程度の「期間限定感」をひしひしと感じている訳です。
さらに深いインタビューをしていくと、「このまま女を実感せずに終わりたくない」という妻たちの欲望も知ることができました。それならいっそ、外の世界で「女」を実感する機会を作ってあげよう。その結果生まれたのが「美魔女コンテスト」だったんです。
「美魔女」がブームになれたのは、7割の妻たちの「人に言えない欲望」にリーチできたからです。一見華やかな「美魔女ブーム」の裏側に、「セックスレス」があったなんて意外でしょ? 新しい市場を開拓するためには、この「欲望」に耳を澄ますことがなによりも重要だと覚えてください。
この連載は『「欲望」のマーケティング 実践編』と言います。みなさんからの「ブランディングの悩み」に対して、私独自の「絞り込む(ターゲティング)+巻き込む(エンクロージング)+揺り動かす(シェイキング)」マーケティングメソッドで、ズビズバ回答していこうというものです。
参考書は拙著『「欲望」のマーケティング』(ディスカヴァー携書)。この連載と併せて読むと、よりいっそう理解が深まると思います。