日本語は特殊な言語だという人がいる。漢字に加えて、平仮名と片仮名があり、日本語ほど難解な言語はないと考える人も多い。日本語は本当に他言語とは大きく異なる特徴を備えているのだろうか。日本語の本当の姿とはどのようなものだろうか。この質問に答えるためには、言語の系統、類型、文法という三つの観点から日本語を考える必要がある。
言語の系統とは、同一の言語(祖語)から変化して生じたと思われる二つまたはそれ以上の言語の歴史的系譜のことを言う。世界には三千とも五千とも言われる言語が存在し、約五十の語族や言語群に分類されている。この言語の系統から見た日本語の所属はどこにあるのであろうか。
じつは、これはまだ明らかになっていない。言語学を少しでもかじった者であれば、日本語は「孤立言語」に属すると学んだはずである。「孤立言語」とは、他の言語から独立した唯一の言語という意味ではない。まだ、所属先がわからない、所属先が証明されていない言語という意味である。
日本語の起源については、アルタイ語族説、朝鮮語同系説、オーストロネシア語族説、ドラヴィダ語族説、混合言語説など、さまざまな仮説が提示されているが、どれも決定的なものとはなっていない。
私の個人的な所感は、朝鮮語同系説にある。日本語と朝鮮語の文法的類似性は多くの研究者によって指摘されるところであり、実際に世界中の学生に日本語を教える筆者の経験からしても、韓国人ほど日本語の上達が早い留学生はいない。
非漢字圏の学生(ヨーロッパ系や東南アジア系の学生)のなかで日本国政府の国費留学制度に合格するような非常に優秀な学生であっても、日本語能力試験ではせいぜい二級(英検でいう二級)程度の日本語力である。
これに対し、韓国の大学で日本語を学ぶ学生は一級に合格するのが当たり前になっている。日本語文の単語の下に、韓国語の訳を書き込んでいくと、そのまま正しい韓国語になってしまうほど、日本語と韓国語の文法は似ているのである。このような言語の類似性が韓国人学生の日本語習得力に大きく貢献していることは論を俟(ま)たないだろう。