狂乱の反日デモは峠を越えた。だが、本当に苦しいのはここからだ。世論操作、連携プレー、経済制裁—事件は尖閣だけで起きているのではない。日中の戦場は、いまや全世界に広がっているのだ。
「日本政府による釣魚島(尖閣諸島の中国名)〝国有化〟という妄言」
「中日間の争いは、長期的に見れば中国が勝利するのは自明の理だ。アメリカが日米同盟を翳して助けてくれると思っているのだろう。日本は国際秩序のゲームのルールを分かっておらず、参加する資格がない」
「釣魚島について政府見解を公表し、国際会議、展覧会を行い、テレビ番組を制作し、ウェブサイトを開設し、強力な世論攻勢をかける。日本を徹底的に孤立させる」
これらは、日本の尖閣諸島国有化後に、中国共産党系の国際情報紙『環球時報』が掲載した、日本を糾弾する記事の一部である。
中国全土に吹き荒れた反日デモの嵐は、いったん鎮まったかのように見える。しかし、尖閣諸島周辺には、未だに中国・台湾の漁船団と、中国の監視船〝漁政〟〝海監〟がわが物顔で居座っている。そして一方、現場海域から遠く離れた世界各地では、いま着々と〝日本包囲網〟が構築されつつあるのだ。そのことに気付いていないのは、他でもない日本人だけである。
冒頭に挙げた言葉は、いわば中国政府による密かな宣戦布告であり、また怒れる中国人の偽らざる本音だろう。事実、中国政府は世論攻勢の一環として、尖閣諸島の領有を改めて強調した『釣魚島白書』を9月25日に発行している。対する日本は実質上、国際的に何の情報発信も立場表明もできていないのが現状だ。
ジャーナリストの富坂聰氏は、すでに日中情勢は後戻りできない地点に至っていると警告する。
「領土問題を強引に解決しようとすれば、最終的には紛争しかない。しかも経済制裁を発動したとなれば、これは戦争の入口に立ったと言っても過言ではありません。お互いの国力を試しあっているわけですから。もはや、日中の戦いは始まってしまっているのです」