[プロ野球]
上田哲之「監督の資質」

スポーツコミュニケーションズ

野村監督になかった栗山監督の柔軟性

 斎藤は二軍でも打たれ続けた。チームは埼玉西武と熾烈な優勝争いを演じている。今季は二軍で終わるのだろう。今、しっかりフォームを立て直すことが斎藤のためだ――そう思っていたら、なんとシーズン最終盤、斎藤は一軍に戻っていた! 吉井理人投手コーチにいたっては「日本シリーズだけ活躍する投手だっているからね」と、不敵なことをつぶやいている。これでもし、斎藤がクライマックスシリーズで好投したら、もはやマジックの域である。

 例えば、広島カープの野村謙二郎監督は今年、3年目の堂林翔太を大抜擢したことで話題となった。二軍でもたいして打っていなかった選手が開幕からスタメンで出場し続け、一瞬だが首位打者の座にもついた(3日間だったかな)。6月には大活躍したし、ホームランも12本打っている。野村監督は堂林を育てた。さすがの慧眼――という評価も一部にはあるだろう。

 しかし、カープは8月に一時は4位東京ヤクルトに3.5ゲーム差つけて3位に躍進したのに、9月に大失速。9月下旬には逆にヤクルトに6.5ゲーム差をつけられての4位。クライマックスシリーズの夢は潰えた。この間、堂林は絶不調(もっとも、チームの野手全員が絶不調で全く点が取れず、負けるべくして負けたのだが)。打率もとうとう2割4分台まで落ち込んだ。規定打席到達者の中の後ろから2番目である(10月4日現在)。

 別に堂林一人の責任ではない。早い話が、だれも打てなかったのだから。むしろ3位になった6月から8月にかけての躍進は、堂林を含む若手や新外国人など新戦力に負うところが大きかった。しかしながら、8月後半から9月にかけてのカープの大失速と、堂林の不振(なにしろ4三振なんてのもありました)が、どこかでリンクしているとみて、そんなに間違っていないだろう。

 一方、斎藤の二軍落ちと、最終的に西武に競り勝った日本ハムの首位争いも、どこかでリンクしているのではあるまいか。堂林を全試合スタメンで使うことが、育成への近道である、という信念が野村監督にはあるのだろう。そういう側面があることは否定しない。しかし、そう思わせておいて斎藤を二軍に落としたような、あるいは二軍に落とさないまでもスタメンをはずすといったような、栗山監督的な発想の柔軟性、意外性はなかったとも言える。優勝を達成した監督と、クライマックスシリーズを逃した監督の岐路が、そこに潜んでいるのではないか。